いよいよ来週1月16日(金)から公開となる映画『旅の終わりのたからもの』の公開記念トークイベントがkino cinéma新宿にて開催。

 イベントにはイラストエッセイストの犬山紙子さんと、コラムニストの山崎まどかさんが登壇。自身の経験をもとに女性の生き方や育児についてのエッセイを数多く執筆し、現在はTV、ラジオ、雑誌、Webなど様々なメディアで活躍中の犬山さん。主演を演じたレナ・ダナムの著書の翻訳経験もある山崎さん。30代バツイチの主人公ルーシー(レナ・ダナム)について、笑えるけどちょっと痛くもある親子関係について、戦後80年を経て“痛みや記憶を受け継いでいくこと”の重要さ、など見どころたっぷりの本作について語りつくしました。

 

“親子旅あるある”な共感ポイントが笑いを誘う

 本作は、ホロコーストを生き延びた自由奔放な父・エデクとその娘で少し神経質な娘・ルーシー、凸凹親子がポーランドの旅を通し、時にぶつかり合いながらも、お互いの抱える“痛み”に向き合う異色のロードムービー。

 まず映画の感想を犬山が「テーマ的にとっても重たい映画なのかなと思いきや自分と同世代の主人公・ルーシーと父親・エデクのやり取りが、「あるある!」っていうのがすごく多くて!「あ、ここでこういう齟齬あるよね」とか、「こういうイラつきお互いにあるよね」と共感するポイントがとても多くて」と“親子旅あるある”な共感ポイントが笑いを誘うと作品を一押し。続けて「私、母を3年前に亡くしたんですけど、その時に、母の痛みだとか歴史を全然知らないっていうことに、後から打ちのめされた経験があって、改めて、今生きている父に向き合いたいって思っていた時に、この映画に出逢えたので心に響きました。」と自身の経験に物語を重ね合わせることが出来たとしみじみと語った。

 

 主人公のルーシーはNYで音楽ジャーナリストとして成功するも、過去のことを一切話さない父に疎外感を感じており、ポーランドの旅を計画。しかし、過去を避けたい父・エデクは旅の計画をことごとく打ち壊していく。ルーシーについて犬山は「絶対そこは(父にとって)傷だから触れちゃいけないよねってところを、ルーシーは結構ガツガツ行く。見ていて痛々しい部分もあるが、父のことを知りたいっていう強い心が感じられて、気持ちがすごく伝わってきました。」痛々しくも愛すべきキャラクター性を絶賛。

 ルーシーを演じたレナ・ダナムの著書「ありがちな女じゃない」の翻訳を担当した山崎は「レナは『GIRLS/ガールズ』っていうドラマのクリエイター兼主演として有名で。近年は、自分の企画か、監督か、脚本に関わってるか、友達の作品に脇で出るっていうくらいで、彼女が主演として出る映画ってすごく珍しいんですよ。相当この企画に惚れこんだなと。もともとレナのファンだったので、本作はすごく気になっていた。」と兼ねてより本作に期待していたとコメント。山崎の言う通り、本作はレナ自身が監督・主演を務めた『タイニー・ファニチャー』(2010)以来、実に15年ぶりに主演を務めた作品。レナの久しぶりの演技にも注目したい。

痛みや記憶を受け継いでいくことの大切さ

 本作は、メガホンをとったドイツ人監督、ユリア・フォン・ハインツたっての希望で、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所外周での撮影も敢行。犬山はそのシーンについて「あのシーンは、父・エデクが過去の自分を確かめるというか、邂逅するというか、すごく深いシーンですが、ちょっとコメディな部分もあって……当事者だからこそできるギャグみたいのが」とネタバレにならないように言葉を詰まらせると、すかさず山崎が「ネタバレにならない程度に言うと、彼(エデク)はアウシュヴィッツのサバイバーなんで、『サバイバー特権』があるんですよ。そこが私はすごく面白くて。深刻な歴史なんですけども、当事者の経験だからこそできるようなシーンがたくさんありますよね」とフォローを入れつつ、重くなりがちなテーマだが、底抜けに明るく今を全力で楽しむ当事者からの目線で語られることで、唯一無二のシーンに仕上がっていることを語った。

 また山崎は昨年のアカデミー賞でも話題になり、本作とテーマや設定も似た『リアル・ペイン~心の旅~』を挙げ「『リアル・ペイン』もすごい映画なんですけど、主人公たちがホロコーストを経験した祖母を持っていて、今の私たちぐらいの世代の距離感で話が進む。比べて本作は90年代を舞台にしているので、もっと戦争の傷やトラウマが身近に感じるような気がします。」と本作がより戦争が人に与えるトラウマやそのトラウマが世代を超えて継承される様をダイレクトに描いているとコメント。

© 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

 犬山も「舞台が90年代だからこそ、まだその「傷」っていうものが、“かさぶた”になってない……。その状態の傷の具合をしっかり映し出せているのかな、って感じました。やっぱり、サバイバーの方々は一人一人名前があって、その人たちの物語があって、家族がいて。生き延びた先に、この「痛み」を引き継ぐというか、伝えていくことは意図的にやらないと、いとも簡単に“なかったこと”にされてしまうんだなと強く感じました。」と作品のテーマでもある、“痛みや記憶を受け継いでいくことの大切さ”を熱を込めて語った。

「娘にウザがられてるかも...」と苦笑

 イベント終盤では、本作のコメディパートでもある全く噛み合わない親子の痛々しい関係について。犬山は「たまに自分も心が痛くなるんです。」と呟きつつ「ルーシーの姿を見ていて私は娘として「あ、わかる、お父さんに対してこういう気持ちあった!」って思うのと同時に、今、私自身も娘を育てているので、「あれ? 私、親として、こういうウザい絡み方を娘にしてるんじゃないかと思い……。」と親としての不安を吐露。「例えば、娘を愛称で呼ぶんですね、親としては、すごーく可愛いと思って娘のことを「本当にシルバニアファミリーみたいで可愛い」って思ってるんですけど、もしかしたら娘的には嫌かも知れないっていう。いつか娘に「あの頃、お母さんがシルバニアファミリーって私のこと言って、すごい傷ついた」と言われてらどうしよう……」と将来の心配を明かしつつ、最後には「親としての自分、娘としての自分、両方グサッとくるシーンもあり、幅広い世代の方に刺さる作品だと思います。」と作品の魅力を一押しした。

 

 ありったけの共感が胸を締め付ける感動のロードムービー映画『旅の終わりのたからもの』は1月16日(金)より、kino cinéma新宿ほか全国公開!

STORY

1991年、両親の故郷であるポーランド・ワルシャワにNY生まれのルーシー(レナ・ダナム)が初めて降り立つ。ホロコーストを生き抜き約50年ぶりの帰郷となる父エデク(スティーヴン・フライ)も一緒だ。自身のルーツを探りたいルーシーの計画を次々に潰していく父に、ルーシーは爆発寸前。アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所を訪れ初めて父の口から恐ろしい記憶を聞くも、2人の心の溝は埋まらない。ついに父と別れNYへ帰ると決めたルーシーを、父は思いがけない場所へと連れていく――。

 

監督:ユリア・フォン・ハインツ 原作:「Too Many Men」 リリー・ブレット著

出演:レナ・ダナム(「GIRLS/ガールズ」)、スティーヴン・フライ(「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」)

2024/独、仏/英語、ポーランド語/112分/カラー/5.1ch/スコープ/字幕翻訳:渡邉貴子/原題:TREASURE

提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ

© 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

公式サイト:treasure-movie.jp

公式X:@kino_arthouse(キノフィルムズ・アートハウス部)

提供/(株)キノフィルムズ