鬼才・佐藤二朗が映画にすべく執筆するがその過激なテーマと特殊な世界観ゆえに、お蔵入り寸前となっていたオリジナル脚本が編集者の目に留まり、永田諒の作画によって漫画化した「名無し」。数奇な運命を背負い“名前のない怪物”と化した男の希望と絶望、そして狂気を描破するこのサイコバイオレンスは好評を博し、“映像化不可能”の烙印を覆し昨年10月、瞬く間に映画化が決定した。
自ら生み出したキャラクター“名無し”を演じるのは、『爆弾』(25)で冴えない中年男の皮を被った知能犯・スズキタゴサク役を怪演し、日本アカデミー賞はじめ、様々な映画賞を席巻している佐藤二朗。共演には、近年俳優としての評価を高め続ける丸山隆平、タレントの枠を超え女優、プロデューサー、実業家としても活躍するMEGUMI、同じ演劇畑出身の佐藤の熱望に応えて駆けつけた佐々木蔵之介が名を連ねた。そして『悪い夏』『嗤う蟲』(25)などで知られる当代屈指の映画職人・城定秀夫監督が劇中に仕掛けられた謎とタブーに潜む深い闇をえぐり出す。見えない刃が光るとき、切り裂かれたスクリーンの向こうから、名もなき怪物の魂の叫びが日本を震撼させる。
佐藤は本作の着想について、「普通の日常の中に狂気が潜んでいるシーンを自分で演じたいと思ったのが始まり」だと語り、「笑っていると思ったらいつの間にか泣いているとか、言葉で説明できないような笑いや怒り、曖昧な感情、そういう人間の瞬間に僕は興味があって面白みを感じるんです」と、人間の不可解さに惹かれた創作の原点を明かす。また、「“凶器が見えない”という設定もそのとき同時に思いついた」といい、観る者の認識を揺さぶる仕掛けについても言及した。
さらに、本作の根底に流れる社会性については、「社会は機会の均等を唱えていますが、現実には神さまから与えられたカードが圧倒的に“貧困”だったり、どう考えても逆転不可能なカードしか配られない場合も残念ながらたくさんあるし、それによって社会的な事件も起こっています」と指摘。「理不尽なのは仕方のないことだとわかりきっていても、人間の温もりやつながりがそれに負けて欲しくないという思いが僕の中にはあるんです」と、自身の強い思いを吐露する。
さらに、「完全な絶望というのは人と人のつながりがなくなったときに訪れるような気がしていて、誰かとつながれているうちは、とりあえず明日は生きていけるんじゃないかと。神さまの気まぐれなカード配りに勝てるのかどうか、山田太郎はそれを試されている存在でもあるんです」と、主人公・山田太郎に託した信念を明かしている。
この物語を映画にするには覚悟が必要
一方、城定監督は脚本を初めて読んだ時のことを振り返り、「企画が通ることも難しいような題材だと思うので、これを映画にできるんだ、面白くなりそうだなとワクワクする感じがありました」とコメント。「専業脚本家にはない発想の面白さがあり、綺麗にまとまりすぎていないところに魅力を感じた」と、俳優・佐藤二朗だからこそ生み出せた独自性を高く評価している。
また演出面については、「何を考えているのかあまりわからないようにしたかったので、映画では喋らないキャラクターにできないかと思いました。その方が怖くもあるかなと。喋り方も聞き取れるかどうかギリギリのラインをねらいました。神様に向かって語りかけるセリフは二朗さんの発案です。太郎自身もある意味では神に守られてここまで生きてきた部分があるというか、神の不条理さによるスリラーみたいな側面もあると思いますね」と、観客の想像力を刺激する演出意図と製作の裏側を明かしてくれた。
佐藤は城定監督について、「この物語を映画にするには覚悟が必要だと思っていたが、完成作を観てその覚悟を強く感じた」と称賛し、「完成した作品を初めて観た後、あまりにも素晴らしかったので、城定さんにありがとうと握手を求めたんですよ。劇中で山田太郎ができなかった、右手での握手を」と、劇中の設定と重ねた佐藤二朗らしいエピソードも披露している。佐藤二朗が生み出した唯一無二の人間ドラマに、城定秀夫監督が鋭利かつ繊細な演出で新たな息吹を吹き込み、人間の深淵をえぐり出す強烈な映像作品へと仕上がった本作。狂気の奥底に潜む孤独、そして人と人とのつながりへの希求。観る者の感情と価値観を激しく揺さぶる映画『名無し』の衝撃と余韻を、ぜひ劇場のスクリーンで体感してほしい。
映画『名無し』は、5月22日(金)より全国公開。
『名無し』
白昼のファミレスを襲った無差別大量殺人事件。防犯カメラに残された容疑者の中年男。被害者は誰もが鋭利な刃物のようなモノで切りつけられていたが、映っているはずの凶器の姿だけが目視できない。鍵を握るのは男の右手。その手が向かう先には必ず何かが起こる。目に見えない力の秘密に隠された、恐るべき真実から逃がれることはできるのか?
原作・脚本:佐藤二朗
出演:佐藤二朗 / 丸山隆平 MEGUMI / 佐々木蔵之介
監督・共同脚本:城定秀夫
配給:キノフィルムズ
©佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ ©2026 映画「名無し」製作委員会
2026年|日本|カラー|原作:佐藤二朗「名無し」(HERO’S Web)|PG12
公式HP:https://774movie.jp
公式X(@774_movie):https://x.com/774movie
提供/(株)キノフィルムズ
