新築供給が細り、東京の家賃は上がり続ける。現在の管理戸数2万8000戸以上、2028年に売上600億円を目指す不動産テック企業robot home代表の古木大咲氏に、杉村太蔵氏が、「成長の理由」と「AIと不動産投資」について聞いた。
photo : Shiro Miyake
杉村 正直に言うと、最初はAIと不動産投資と言われてもピンときませんでした。キャッシュフローをきちんと出す、リスクを抑える、というのは不動産投資の基本ですが、それができれば苦労はしません。「AI」という言葉がただ看板についているだけで、中身は普通の不動産会社なんじゃないかとすら思っていたんです。そもそも、AIと不動産投資はどこでつながっているんですか。
古木 結論から言うと、土地の目利きや仕入れにAIはほとんど使っていません。AIが効いているのは「管理」です。清掃報告や退去手続き、原状回復の見積もりまでアプリ上で確認できます。オーナーが所有するアパートの管理状況もアプリで把握でき、次にどの物件を買うかの判断にも生かせます。今、2万8000戸以上の管理をしていますが、この事業の営業利益率は54%あります。一方、物件を売る側の営業利益率は5・3%ほどしかない。携帯電話と同じ発想で、物件は高利回りにして利益を薄くし売れやすくする。稼ぐのは管理です。AIを活用してこれらの仕組みを構築できたことが、うちの最大のポイントです。
鹿児島県出身。2001年に不動産会社に入社し営業として活躍。25歳で独立し、現・robot homeを設立。2008年のリーマン・ショックで倒産の危機に直面するも乗り切り、在庫を持たない売買契約モデルへ転換。2015年、東京証券取引所に上場。不動産一筋25年、AIとIoTを軸にした管理事業で高収益企業へと成長させた。
投資家の素顔とは
杉村 なるほど。物件を安く売って後で稼ぐという発想は、AIによる自動化があって初めて成立するわけですね。だとすると、それを買う投資家はどういう層になるんですか。
古木 弊社オーナーの平均像は年齢49歳、年収2400万円、純金融資産1億円。経営者や上場企業役員など、これから資産を作りたい層です。土地付きアパートは一棟1億~3億円で、フルローンを使う。自己資金は1000万~1500万円で済み、表面利回りは6%前後。年間キャッシュフローは200~300万円残ります。理論上は年収1300万円、自己資金1500万円あれば一棟オーナーになれます。取引実績のある80行以上の銀行のうち40行以上は提携で、土地から建築、管理までワンストップです。
杉村 なぜここまで高い利回りが成立するんですか。地価も建築費も上がり続けている中で。
古木 建築費の高騰で新築の供給がどんどん細る一方、23区は人口も単身・共働き世帯も増え続け、需給が逼迫しています。直近1年で、東京エリアの平米あたり家賃は6・6%上がりました。供給が増えないから家賃が上がる。逆に言えば、投資家の資金が住宅供給を補い、家賃高騰を和らげている面もあります。
杉村 部屋そのものにもIoTが入っているとうかがいました。これも、AIによる管理と地続きの話なんですか。
古木 その通りです。来訪者の応対・エントランス開錠からお困りごとのチャット連絡まで、入居者はスマホひとつで完結します。実際、管理している東京の物件は今日時点で入居率99・9%。退去のたびに賃料も上がっています。入居者側の利便性が、そのままオーナーの利回りを支えているわけです。

在庫を持たぬ経営
杉村 ここまで洗練された仕組みにたどり着くまでには、かなり紆余曲折があったのでは。
古木 二十歳の頃に不動産営業に入り、ネット集客で会社の売上の半分を自分一人で作っていました。「自分でやったほうが早い」と二十五歳で独立、三年で売上20億円まで伸ばしましたが、2008年にリーマン・ショックが直撃し、借入20億円を半年以内に返済できず倒産寸前に。最後は気合いで乗り切りましたが、同じ危機を繰り返すわけにはいきません。そこで、土地を先にオーナーに買ってもらい建築を請け負う「在庫を持たない」モデルに転換し、2015年に上場しました。管理をAI化していったのは、その後のことです。
杉村 私は2016年にマンションを買って2021年に売り、その含み益を今の地方創生の仕事の元手にしました。証券会社にいた身として、金利上昇が気になります。表面利回り6%といっても、借入金利が上昇すればスプレッドは薄くなりませんか。
古木 区分マンションは表面利回りが2~3%まで下がっていますから、金利が4%に乗れば逆ざやです。うちは6%台を維持できているので、仮に金利が4%でも2ポイントのスプレッドが残ります。金利上昇はインフレの裏返しでもあるので、現物資産への需要はむしろ強まっています。
元衆議院議員。証券会社勤務を経て2005年に衆院選で初当選。現在はタレント・コメンテーターとして活動する傍ら、地方創生事業にも携わる。自身も不動産投資の経験を持つ。著書に『杉村太蔵の推し株「骨太」投資術』(文藝春秋)など。
杉村 土地の仕入れには、ほとんどAIを使わないとおっしゃっていましたが、そこは今もアナログなんですか。
古木 非公開物件にリーチするには人のネットワークが重要なので、少ない営業人数に対して仕入れに携わる人員は50人以上います。情報が入れば最短5時間以内に金額を提示。社内承認に1週間もかかる同業他社には真似できません。ここだけは、AIだけではなく組織の力なんです。AIが管理や定型業務の手間を肩代わりしてくれるからこそ、人は関係者との信頼構築の領域に集中できる。
コミュニティの力
杉村 つまり、AIが浮かせた分の力を、人にしかできない仕事に振り向けているということですね。
古木 まさにそうです。だから、オーナーさん同士のつながりにも力を入れています。「経験シェア会」を開いて、オーナーに所有物件やキャッシュフローを発表してもらう。不動産経営者は孤独で、成果を身近な人には話しづらいものですが、同じ立場同士なら遠慮なく話せる。特別なオーナー150人には私自身が2、3カ月に一度必ず会います。オーナーさん自身が、私たちの成長を支える最大の原動力なんです。管理はAIに任せても、人と人との関係だけは代替できません。
杉村 最後に、今後の成長戦略を聞かせてください。
古木 2028年に売上600億円。エリアは東京・大阪・名古屋・福岡・仙台の五大都市を中心に、商品も4億~5億円クラスへと幅を広げていきます。ストック収益を軸に、オーナーと運命共同体として長く付き合える会社でありたいですね。
(※数値は2026年6月末時点)

株式会社robot home
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