〈私は無実であり裁判の中でこれを証明してきたと思うので、無罪判決でなければおかしいということです――〉
妻を殺害したとして起訴され、裁判で懲役20年を求刑された元長野県議会議員(自民党所属)の丸山大輔被告(50)が、小誌に手記を寄せた。裁判で無罪主張を続ける被告が、亡き妻への思いや自身の政治活動について問われ、綴った内容とは――。
2021年9月29日未明、長野県塩尻市の酒造会社「笑亀酒造」(現在は「和饗酒造」に商号変更)の自宅兼事務所で丸山希美さん(当時47)が殺害された事件。10月16日に裁判員裁判の初公判を迎え、夫の丸山被告は妻殺しについて一貫して無罪を主張してきた。
社会部記者が解説する。
「被告は犯行時刻に、塩尻市の自宅から約80キロ離れた長野市内の県議会議員会館にいたとして『現場には行っていない』と主張しています。裁判は
①被告の所在・移動の状況
②殺害の動機
③現場の状況と痕跡
④事件前後の被告の言動
と4つのテーマに分けて審理が進みました。殺害の動機に関わる審理では、被告の不倫相手まで出廷し、『事件後に被告から結婚を迫られていた』と証言するなど異例の展開で進み、11月26日に検察側が懲役20年を求刑して結審しています」
小誌では11月26日配信の電子版オリジナル記事で、証拠提出された希美さんの「覚書」や、被告人質問での被告の様子について報じている。「覚書」は日常の苦悩などをパソコンでつづった希美さんの日記であり、たとえば2016年9月、不倫現場を目撃したとして、こう記述している。
〈視察後に帰る予定が懇親会ができたから明日朝に帰ると言われてうそだとすぐに分かりました。電車で長野へ。(中略)部屋から出てきた2人。隠れたものの怒りは頂点に。後ろからどついたら今までに聞いたことのないような驚いた声を出しましたね。今まではなにを聞いても知らぬ存ぜぬ認めさえしなければなんとかなるという甘さがあったから現場を押さえるしかなかった。つらい現実をつきつけられた。そこから長い話し合い〉
検察側は公判で、こうした被告の女性トラブルと、希美さんの実家から受けている4000万円の借金が事件の動機となったと指摘した。
「被告の不倫相手は結婚を望んでいたが、希美さんとの関係が絶たれると妻の実家から借金の返済を迫られ、選挙活動への支援も得られなくなる。離婚せずに不倫相手との関係を続けるために、希美さんの殺害に至った――というのが検察の主張です。対して弁護側は、夫婦間にトラブルはなく、殺害する動機はないと真っ向から反論しました」(同前)
総勢21人の証人尋問を実施し、検察側は被告が犯行現場に行ったという状況証拠を積み上げたが、具体的な殺害方法は解明されず、決定的な証拠も不明のまま。判決を控えるのみとなった11月末、小誌記者が裁判後の被告に手紙を送ると、勾留されている長野刑務所から返信が届いた。
記者は前職の信濃毎日新聞時代から、逮捕前の被告に対し、亡くなった妻の遺族としてコメントをもらったり、県議として選挙への出馬意向を聞いたりして面識があった。逮捕後も勾留先に何通か手紙を送っていたが、返信が来たのは今回が初めてだ。
今回、手紙を通じて12個の質問を被告にぶつけた。審理が終わった今、被告は何を語るのか。下記が丸山被告から寄せられた手記の全文だ。(斜字は小誌からの質問内容、原文では記者の実名が書かれていたが、本記事ではMと改めた)
M様
ご無沙汰をしております。先日接見禁止が解除になり、何通かお手紙を頂きましたが、時期を逸したと思い、そのままにしてしまいましたが、改めてお手紙を頂いてどうしようか迷いました。不十分な遣り取りでは誤解を招きかねないこと、名高い御紙が私に好意的な内容になる筈が無いことからです。ですが今こうして手に筆をしているのは、私の返事が一体どう利用されるのかと、信毎から文春というMさんの生き様と、この2つの好奇心からです。
さて、質問にそれぞれお答えします。
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source : 週刊文春 電子版オリジナル