渡辺恒雄が肺炎で亡くなる1週間ほど前のことだ。読売新聞グループ本社代表取締役社長を務める山口寿一は、思うように声の出ない渡辺からこんな言葉を投げかけられたという。
「なんもない」
病室のベッドの横にあるソファに腰かけ、いつもと同じように新聞を読んでいた矢先のことだった。
振り絞るようにして放たれたそのひと言は、山口を大いに悩ませる。
「自分は『なんともない』から仕事をしてくれという意味だったのか、『なにも変わることがない』から読売新聞は前に進んでくれと言いたかったのか……。とにかく強い意志を持って何かを伝えようとしている感じがしました」(山口)
渡辺は今際の際で何を伝えようとしていたのか。自ら「最後の独裁者」と称し、業界の内外から畏怖された“ナベツネ”とは一体何者だったのか。
「渡辺さんについて聞かせてください」
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source : 週刊文春 2025年1月2日・9日号