婚活サイトで獲物を探し、金を奪い、命をも奪う。己の欲望のために突っ走ってきた木嶋についに警察の手が届く。後に残るのは、木嶋に弄ばれた孤独な男の姿だけだった。
木嶋佳苗は2009年8月5日に尾山保二(仮名、当時41歳)を埼玉県の駐車場で殺した。ネットの婚活マッチングサイト上で7月13日に知り合ってから、ひと月も経たずに、彼は殺されたのだった。
木嶋は尾山から470万円を奪い、そのうち380万円を使って池袋駅前に家賃約27万円のマンションを借りた。料理サロンを開くという夢のために。
そのため金はもはや、ほとんど残っていなかった。来月になれば、カードの引き落とし日がまたやってくる。だから彼女は狩りを続けた。婚活サイトという狩り場で。
8月半ば、新たに男性ふたりとマッチングを成立させる。そのひとりが埼玉県に住む沢尻悟(仮名、当時38歳)だった。
30日、沢尻にいつもの定型メールを送りつけている。
〈自分がお付き合いした男性は二名だけで……独身最後の学校としてル・コルドン・ブルーに通い、結婚しようと思っていましたが、パートナーが急逝してしまい、介護の仕事をしていましたが、収入が途絶え……料理学校の学費の支援をしてくれる人を……男女のお付き合いですから早い時期にそういうことを……〉
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source : 週刊文春 2025年1月16日号