4年前に認知症であることを公表した漫画家の蛭子能収さん。徐々に症状は進行しつつも絵を描き、講演会活動など仕事を続けている。1年9カ月にわたる蛭子さん取材から見えてきた、ボケても明るく楽しく生きる秘訣とは。
その老人は、猫背だがしっかりとした足取りで部屋に入ってきた。カラフルなチェック柄のシャツにカーキ色のジャケット姿で、襟元には自画像のバッジがついている。白髪の生えた頭の上に被る黒いキャップには「終わり良ければ全てよし」と英語で書かれている。カメラを向けると、人懐っこい笑顔をみせ、ポーズをきめた。
蛭子能収さん、77歳。漫画家、タレント、その肩書に「認知症患者」が加わった。4年前に認知症を公表して以来、全国の自治体に呼ばれ、認知症について講演する仕事が増えているという。
冒頭の場面は2023年11月、東京・渋谷の事務所で写真撮影を行った時のこと。撮影用の衣装を用意したのは奥さんだ。記者が蛭子さんに会うのは3回目だった。ちょうどその日発売したばかりの小誌を渡すと、
「あー文春!」
表紙を見た蛭子さんが声をあげ、続いてマネージャーの森永真志さんがこう補足した。
「文春の愛読者で毎週買っていたんですよ。伊集院静さんの連載が好きで」
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source : 週刊文春 2025年1月16日号