【前回までのあらすじ】札幌の大学に通うマチは、狩猟免許を取得。就活も終え、ハンター二年目の猟期が始まった。マチは一人で入った山で痩せたクマに遭遇し仕留めるが、そのクマを撃ったことを後悔する。その様子を見た堀井銃砲店のお婆さんから勧められ、腕のいいハンターだという「アヤばあ」を訪ねたマチ。彼女の話を聞いたあと、二人は近くの山へ入ることに。
雪が積もった山に入るにあたり、ベテランハンターと呼ばれるアヤばあこと佐藤綾子は、客用のかんじきをマチに貸してくれた。マチも実は自分の最新式スノーシューをジムニーに積んでいるのだが、素直に厚意に甘えることにした。
マチは念のため上着に加えてネックウォーマー、グローブ、耳当てつきの帽子を重ねた。対して、アヤばあは工事現場の人がよく着ているような紺色の上着を重ねただけだ。襟に茶色のモコモコがついてはいるが、防寒としてはやや心許なく見える。
「したら行こうか。太陽さん沈むまでには戻ってくるようにしよう」
その声を合図に出発した。家の裏手にまわり、ゆるやかな斜面を登っていく。アヤばあが先頭、マチはすぐ後ろだ。
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source : 週刊文春 2025年2月6日号