人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。

 美大受験、2浪目に突入した日。こんな歌を書いた。

 “僕を取り巻く世界が教えてくれたもの/それはまるでタバコに火をつけてから/灰皿にねじふせるまでの/そんなちっぽけな始めと終わり”

 心が沈んだ時に気付く、分ったようなこと。当然、ギターコードはマイナー。セルジュ・ゲンズブールみたいに低い声で、

 “彼女を抱いて愛を囁くことでさえ/今は信じられないに違いないが/きっといつかは分ってしまう/そんなちっぽけな始めと終わりMUMUMUMU♫”

 締めはハミングだ。

 分ったようなことを歌って、現実逃避したかったに違いない。

 翌年、合格した時は狂喜乱舞で、すっかり『始めと終わり』を忘れてた。

 しかし、このままずっと続くと思ってた楽しい生活、それを打ち砕いたのは就活だ。今度は『就職ガイダンス・エンプティ・ブルース』なんていう歌を書いた。

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source : 週刊文春 2025年4月3日号