日本製鉄は6月18日、米鉄鋼大手USスチールの買収手続きが完了したと発表した。141億ドル(約2兆円)を投じてUSスチールを完全子会社化。日米間の政治問題にまで発展した買収劇は、約1年半をかけてようやく決着した。
「決め手となったのは、国家安全保障協定の締結と、黄金株(拒否権付き種類株式)の発行です。協定には、2028年までの110億ドル(約1兆6000億円)の投資や社名の維持、米国内生産削減の禁止、社外取締役2人の政府承認などが盛り込まれている。かたや黄金株には、議決権や配当受領の権利はないものの、協定の実行を監督する権利や取締役1人を任命する権利が米政府に付与されています」(市場関係者)
買収を主導した日鉄の橋本英二会長(69)は翌19日の会見で「世界一に復帰する」と強調した。日鉄の昨年の粗鋼生産量は世界4位。29位のUSスチールと統合し、首位の宝武鋼鉄集団(中国)を追う。

「しかし、日鉄の先行きには2つの懸念が待ち受けています」(同前)
1つ目が財務悪化の懸念だ。買収資金と当面の投資で総額3兆6000億円もの資金が必要となる。
「買収資金2兆円は金融機関からのブリッジローン(一時的な資金不足を補う短期融資)で調達しましたが、金利が高いことから早晩、ハイブリッドローン(劣後特約付き融資)へ切り替えると見られます。同ローンは負債でありながら資本に算入できるメリットがある。一方で、日鉄、USスチールの有利子負債総額は約4兆9000億円にまで膨れ上ります。このため、増資が不可欠な状況。日鉄側は『EPS(一株当たり純利益)の希薄化が起きるような増資は考えていない』としているものの、株価への影響は避けられそうにありません」(銀行関係者)
また、米競争法上の問題に対応するため、完全子会社NS Koteの全株式を欧州鉄鋼大手のアルセロール・ミタルに譲渡する。
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source : 週刊文春 2025年7月3日号






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