反省がないとみられても仕方ない。警視庁と東京地検による捜査ミスが確定した大川原化工機の冤罪事件で、6月20日、警視庁ナンバー2の鎌田徹郎副総監が大川原化工機の大川原正明社長らへの謝罪で名前を間違えたのだ。

 警視庁は2020年、大量破壊兵器へ転用できる装置を不正に輸出したとして外為法違反の疑いで大川原さん、元取締役の島田順司さん、技術部門トップの相嶋静夫さんを逮捕。後に起訴が取り消され、警視庁や地検の捜査ミスを認めた東京高裁の判決が確定したことを受けての謝罪だった。

「鎌田氏は島田さんについて、謝罪の場で『山本さん』と間違えて言及。さらに地検の森博英公安部長が会社の名前を『大川原化工機工業』と微妙に間違え、会見場に居合わせた記者らの間には気まずい空気が流れました。なにしろ、山本では島田と一文字もあってませんからね」(警視庁担当記者)

 鎌田氏は間違いに気づくそぶりも見せず、謝罪を続け、森氏も続けた。だが向かい側にいた大川原氏や弁護士は淡々と聞き続けた。

東京地検の森公安部長と警視庁の鎌田副総監(右)

「島田さんもその後、『特に思いはありません』と話しました。大人の対応を続けたのは、それより捜査ミスの再発防止を進めてほしい、という思いが切実だからでしょう」(前出・記者)

 謝罪の場で名前のあがった3人のうちの1人、相嶋さんは起訴取り消しを見る前に亡くなっている。逮捕後に癌が判明し、十分な治療も受けられなかったからだ。公安部特有の結論ありきの見込み捜査の最悪の帰結ともいえ、関係者が再発を懸念するのも無理はない。

 ただ、関係者の突き上げがなくとも、減点主義の警察組織で鎌田氏の出世に響くことは疑いない。

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source : 週刊文春 2025年7月3日号