『木枯し紋次郎』などニヒルな役どころで知られる一方、ジャーナリストや政治家の顔も持つ中村敦夫さん。その広い見識の原点とは。

 私は1940(昭和15)年の生まれで終戦の年に5歳でした。だから戦争の記憶というと、まずは疎開です。3歳くらいまでは東京にいたんですが、読売新聞の記者だった父がいち早く情報をキャッチしたのか、空襲が始まる直前、福島県にあった父の実家へ。

 福島での暮らしはのんびりしたものでした。田園地帯で、食べ物に不自由することもなかった。ただ、近くに小規模な軍事施設があったので、時々B29がごおっと音を立てて飛んでくることはありました。空襲警報が鳴ると、近所の人らと走っていって畑の隅に掘った防空壕に飛び込んで隠れたことは忘れられません。空襲は東京だけじゃなかったと後で知りました。爆撃を受けた記憶はないですが、怖さはありましたね。

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source : 週刊文春 2025年8月14日・21日号