1944(昭和19)年生まれのイラストレーター・沢野ひとしさんは、終戦直後の日本で子供時代を過ごした。戦争の話を避けていた父親の記憶を綴る。

 私の両親から戦争中の話を聞くことは全くなかった。母は私が19歳の時に54歳で亡くなり、父は31年前に84歳で亡くなった。

 今の山口県防府市で生まれた父は宇和島の海軍で軍事訓練を数年受けた。だが当時の事を聞くといつも「まあ昔のことで」と曖昧に話を避けていた。だが「いつか宇和島に行ってみたい」と懐かしそうに話すこともあった。宇和島の海軍は釣りなどしてのんびりして平和だったという。ただし泳ぎの訓練は厳しかったそうだ。

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source : 週刊文春 2025年8月14日・21日号