「甲子園で『広陵』の名前と監督の姿を見るたび、やり場のない怒りと当時の辛い記憶が蘇ります。今回、野球部の生徒が暴力の被害に遭っていたことを知り、『あの時から何も変わっていないんだ』と失望せざるを得ませんでした。広陵野球部の部内暴力は、今に始まった話ではありません。10年前にも、僕が身をもって体験しています。この“悪しき伝統”を放置してきたのは、ほかでもない監督だと思っています」
意を決してそう打ち明けるのは、かつて同校野球部に在籍していたAさんだ。

出場辞退に追い込まれた強豪校
目下、熱戦が続く夏の甲子園。広島県代表の広陵高校が、部内の暴力事案発覚を機に出場を辞退したのは周知の通りである。高校野球担当記者が経緯を振り返る。
「発端は、大会直前に投稿されたSNS上での告発。被害者の保護者のものとされるSNSで、今年1月下旬、当時1年生だった部員のBくんが、野球部寮内で禁止されているカップラーメンを食べたとして複数の上級生から暴行を受け、最終的に今年3月、転校を余儀なくされたとする内容でした」
この暴力事案は高野連に報告され、今年3月、広陵には厳重注意の措置が取られていたが、学生野球憲章に基づく規則によれば、注意・厳重措置の事案は原則として公表はされない。
「広陵はすでに解決済とし、高野連も甲子園出場を認めていた。ところが、この告発が話題を呼び、反響に押されるようなかたちで8月5日、高野連がこの事案を発表。広陵や高野連に非難が殺到し、さらに“炎上”していきます。すると、今度は別の元部員のCくんがSNS上で監督や部員たちから暴力や暴言を受けたと告発。この件は今年6月時点で第三者委員会が設置され、調査中であることも明らかになった。SNSを中心に誹謗中傷も拡大していく中、広陵は2回戦に勝ち進んでいる状況ながら、このままでは生徒や教員の人命に関わりかねないとして、8月10日、出場を辞退すると発表したのです」(同前)

広陵といえば、春夏合わせて53回の甲子園出場を誇る高校球界屈指の強豪校。うち全国制覇を3回、準優勝も7回を数え、多数のプロ野球選手を輩出し続けている名門野球部である。部員は毎年3学年で150名前後。ほぼ全員が野球部寮「清風寮」で集団生活を送る。その大所帯を率いるのが、1990年以来、30年余にわたって指揮を執る中井哲之監督(63)だ。人間育成を重視し、「部員は家族」と公言。全国に名を轟かせる名将の一人だが――。
「蹴りの1発がこめかみ付近に命中し、僕は意識を失いました」
今回、新たな証言者として「週刊文春」に中井氏と名門野球部の実像を明かしたAさん。その告白に戻ろう。甲子園を夢見て、広陵高校野球部の門を叩いたのは2015年の春。中村奨成(現広島東洋カープ)らの同期で、3年時に夏の甲子園で準優勝を果たすことになる学年だ。
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source : 週刊文春 電子版オリジナル
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