「定年後には“その後”があった。そのことに、70代になって初めて気が付きました」

 

 ベストセラー『定年後』で“名刺を失った後の生き方”を描いた楠木新氏(71)が、70代からの「新・定年後」の歩き方を指南する。

『定年後』(中公新書、2017年)は、私が60歳前後の頃に取材した内容をもとに執筆したものです。あれから10年。当時は気付かなかったことが見えてきました。一言で言えば「定年後は10年で終わる」ということ。

 

 例えば、私がかつて通っていたスポーツクラブには朝9時のオープン前から並んでいる人たちがいます。だいたい70代半ば前後の人が多いのですが、元サラリーマンだったかどうかの見分けがつきません。

『定年後』で取材した60歳前後の人たちは、「この人は会社員だったか、そうでなかったか」を肌で感じることができました。長年のサラリーマン生活の雰囲気が残っていたのです。しかし定年後、10年も経てばそれは消えてしまいます。

 つまり定年後の人たちは十把一絡げにされがちですが、60代の「定年後」と、70代の「新・定年後」の間には、明確に段差があるということです。

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source : 週刊文春 2025年8月28日号