「スズメと記者の死に場所はわからない」。そんな言葉の残る新聞社で育った。スズメも記者もうるさく群がって騒がしいが、いつの間にか消えてしまう。駆け出し時代の上司は、「だから、お前はスズメのように死ぬなよ」と付け加えた。
記者にとどまらず、われら無名人はどこに行ったのかわからないまま消えていく。だがその中には、消えた先まで追いかけて、この世にその生き方を書き残したい人がいる。
私にとってその1人は、今年4月に71歳で亡くなった元巨人軍スカウト部長の山下哲治だった。川相昌弘に始まって二岡智宏、坂本勇人、長野久義、岡本和真ら巨人を支える選手を獲っただけでなく、私と組んで育成選手制度を先導した仕事人である。「鬼瓦」の異名を取ったこの含羞の人の一端を、私は『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋)に記したが、最期の姿を書き洩らしてしまった。以下は、消えた後になって知った彼の愛妻物語――つまり戦記異聞である。

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source : 週刊文春 2025年9月4日号






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