宝塚の娘役トップスターとして人気を博し、退団後は演劇を中心に、映画・テレビと活躍の舞台を広げてきた浜木綿子。10月に卒寿を迎えるいま、昭和の大女優が元夫との再会、息子との秘話、孫への助言など、家族への想いを語る。
猿翁さんは稽古場に入ると、椅子に腰かけられました。変わられたなと思いました。しばらくして照之がわたしに手招きしたのです。わたしは自然に猿翁さんの傍らへ行き、
「浜木綿子でございます。お久しぶりでございます」
と声をかけました。彼の第一声は「若いね」。それから「照之を、こんなに立派に育ててくれてありがとう。大変だったでしょ」と。「大変でした」とお答えしました。

元夫と再会したのは40数年ぶりのことでした。そのときになぜ芸名を名乗ったかって? 体の中から自然に出てきたんですよ。それがわたしの姿勢ですから。
2012年5月の出来事を振り返るのは、女優の浜木綿子。今年10月に卒寿を迎える浜は、長年舞台の第一線で活躍。私生活では二代目市川猿翁(三代目市川猿之助)と離婚後、長男の香川照之(59)=市川中車を女手一つで育てた。6月、初の自伝『浜木綿子 楽しく波瀾万丈』(JTBパブリッシング)を上梓した。

最初で最後の本になります。人生90年、山あり谷あり、谷底あり、山越えあり、いろいろありました。でも、泣いている暇なしという感じで前へ進みました。
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source : 週刊文春 2025年9月11日号






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