自民、社会、新党さきがけの自社さ政権で首相を務めた村山富市元社会党委員長が10月17日、老衰で死去した。101歳の大往生。翌18日の各紙には「混迷期鎮めた人間力」(日経新聞)などとその人柄の良さを表すエピソードが載った。

 元政治部のベテラン記者は「人柄の良さ故か、脇の甘さ故か。首相時代の官邸クラブとのトラブルを思い出す」と語る。

 首相就任直後、朝日新聞社会部の記者が村山氏と突然、面談した。当時は記者クラブの「暗黙の協定」で首相への個人取材は禁止されており、記者は「大分勤務時代から村山さんに助言していた。今回も呼ばれただけだ」と釈明したが、記者クラブが朝日側に猛抗議する事態に発展した。

「村山氏は野党から急に権力の館の主になって、暗黙の協定なんか知る由もなかった。昔なじみの記者に愚痴をこぼしたかったのだろう」(前出・ベテラン記者)

愛称はトンちゃん、長い眉毛がトレードマーク

 政治部デスクは言う。

「村山氏は2つの時代の転換点を象徴していた。1つは官邸機能の強化だ」

 きっかけは村山政権下の1995年1月17日に起きた阪神大震災。「政治三流、経済二流、官僚一流」とされた時代で、官邸機能は脆弱だった。「首相が代わっても特段の引き継ぎもなく、官邸の執務室に入っても資料はなく、引き出しには鉛筆と消しゴムしかなかった」(首相秘書官経験者)。そんな中、当時戦後最大級の災害に直面した村山氏は「指導力がない」と酷評されたが、「日本の行政全体の問題だった」(前出・秘書官経験者)。村山氏の後継の橋本龍太郎首相は官邸強化に尽力し、現在の「官邸一強」を生んだ。

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source : 週刊文春 2025年10月30日・11月6日号