ウクライナのゼレンスキー大統領には、失望の大きい展開だっただろう。
10月17日、ゼレンスキー氏はトランプ米大統領とホワイトハウスで会談したが、最大の焦点は米国製巡航ミサイル「トマホーク」の供与だった。ウクライナが最大射程2500キロのトマホークを手にした場合、到達可能なロシア軍関連施設は1945カ所にも達すると言われている。モスクワも当然、射程圏内だ。トランプ氏も、供与の可能性を仄めかしていた。
だが蓋を開けてみれば、トランプ氏は会談で、トマホークは「事態のエスカレーションに繋がりかねない」として供与に後ろ向きだった。ゼレンスキー氏は会談の冒頭、トランプ氏に対してあらゆる賛辞を贈ったが、トランプ氏の口調や表情は終始固かったという。終了後、ホワイトハウス内でゼレンスキー氏が会見するのも認めなかった。
背景にはロシアのプーチン大統領の狡猾な作戦がある。会談前日、プーチン氏がトランプ氏に要求し、2時間半も電話会談を行ったのだ。そこで2週間以内に、ハンガリーのブダペストで、ゼレンスキー氏抜きで米ロ首脳会談を行うことが決まった。トマホーク供与についても、釘を刺したと思われる。しかも電話会談はゼレンスキー氏がアメリカに到着したタイミング。トマホークの使用許可を得られると思って渡米したゼレンスキー氏にとっては、梯子を外された格好だ。

首脳会談が行われる予定のハンガリーは、EU加盟国だがロシア寄り。今年4月、国際刑事裁判所からの離脱を表明した。プーチン氏の訪問に支障は無い。欧米やEUの分断を狙っているプーチン氏は、ここでトランプ氏にNATOからの離脱を働きかけるだろう。
ロシアもすべてが安泰なわけではない。たとえばインドはロシア産原油を購入してきたが、それによってアメリカから50%の関税を課された。そこでインドのモディ首相はトランプ氏と電話会談を行い、ロシア産原油の購入を段階的に減らしていくことを約束したとの報道もある。ロシアへの経済的打撃は小さくない。
ただ、ロシア対ウクライナは、圧倒的にプーチン氏が優位だ。トランプ氏との電話会談で、プーチン氏は停戦条件として、東部二州の割譲を要求。その見返りにウクライナ南部一部地域の放棄を示唆した。だが、これはあくまで終戦ではなく停戦条件だ。
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source : 週刊文春 2025年10月30日・11月6日号






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