この先、日本は超インフレ社会に――。エコノミストのエミン・ユルマズ氏と投資家として大成功を収めている杉村太蔵氏が、未来を生き抜く投資戦略を明かす。

――2025年10月末、日経平均が5万2千円台に乗り史上最高値を更新。しかし足元の生活実感とかけ離れていることから「バブルでは?」という見方もあるようです。

エミン 今の日経平均はバブルではなく実態の伴った適正な数字です。それはPER(株価収益率)を見れば分かる。PERとは株価が一株あたり純利益の何倍であるかを表し、現在の株価が利益に比べて割高か割安かを判断する指標です。バブル期は日経平均のPERは60倍でした。でも今はせいぜい18倍くらい。適正水準は16~18なので、極めて妥当な数字であると言えるのです。

杉村 同感です。バブル崩壊後、「失われた30年」と称されますが、失われたのは私たち個人の可処分所得であって、日本経済全体が失われたわけじゃない。実際に2000年代初頭から見ると、日本の企業全般(金融業、保険業を除く)の純利益は10兆から80兆に増え、実に8倍になっています。それなのに法人税収は50%程度しか増えていません。

エミン 一方で消費税収は増え続けていますね。

杉村 ええ。10兆円から25兆円と倍以上になっています。私は2005年に衆議院議員に当選したんですが、その頃「トリクルダウンを起こす」と盛んに叫ばれていました。これは、まず大企業を儲けさせ、次に中小企業、そして個人にまでシャンパンタワーのように富が滴り落ちるようにすること。そのために法人税率を下げることで国民の所得はどんどん上がると見込んで消費税を上げました。しかし、企業は内部留保の積み増しに走り、賃上げは実行されずトリクルダウンが起きなかった。これが株価のわりに景気の良さを感じられない理由なんです。

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source : 週刊文春 2026年1月1日・8日号