日本共産党の不破哲三元委員長が昨年12月30日、亡くなった。95歳で大往生した不破氏について、各新聞が評したのが「党の理論的支柱」。政治部記者は「党職員たちは記者と懇談する際、志位和夫前委員長を念頭に自らの親指を立て『親分は本当に頭がいい』と悦に入るが、志位氏は不破氏の足元にも及ばない」。共産党関連の本や文書を読みあさったウオッチャーも「不破氏の文章は論理的に極めて精緻。志位氏の理論には穴がある」と語る。「理論的支柱」と評されるゆえんだろう。

不破氏は戦後、党を引っ張った宮本顕治氏に見いだされ、1970年、40歳で書記局長に就任。82年、議長になった宮本氏に代わり、委員長に。緻密な論理に基づく国会での論戦力は自民党の閣僚を恐れさせた。戦前に収監されてカリスマ的存在だった宮本氏とは違った政治的な魅力があり、自民の大物議員から「うちに来たら立派な総理になる」とスカウトされた逸話もある。
おしどり夫婦で知られ、妻が20年に亡くなると、体調不安説が流れるようになった。「妻の死去で気力が途絶えた」「党大会でパイプ椅子に2時間座れるぐらい体力はある」「専属の車がなくなった」など、様々な情報が飛び交った。
「党の理論的支柱」とともに、ベテラン記者による評伝で共通していたのが、柔軟性と限界だった。党議長として党綱領の「君主制廃止」「自衛隊解散を要求」を削除し、象徴天皇と自衛隊を当面容認する現実路線に切り替える柔軟さを見せた。一方、限界とされたのが民主集中制の温存だった。党がいったん決めれば団結して実行するという共産党特有の組織原理だ。政治部デスクは「この原理で執行部はいくら選挙で連敗しようと党内批判を封じられた。志位氏が20年以上にわたり委員長を務めることができたのもこの原理のおかげ。『理論が正しければ選挙で負けても仕方がない』との理屈で不破氏自身も守られてきた」と分析する。
党内議論を経た理論は正しいという無謬性を担保してきたのは、党の歴史上、図抜けた存在である不破氏の頭脳だった。
「だからこそ、不破氏は存命の間に『私も間違うことがある』と民主集中制の廃止を提唱し、党内原理を変えるべきだった」(同前)
不破氏を見いだした宮本氏は志位氏も同じように幹部に抜擢。一方、現委員長の田村智子氏は不破氏の意向もあって女性初の委員長に就いたが、志位氏に頭が上がらず、独自性を発揮できていない。リーダーがスケールダウンする組織に明るい未来はない。不破氏の限界は党の限界でもあった。
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source : 週刊文春 2026年1月15日号






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