新年早々のアメリカによるベネズエラへの軍事行動には驚きましたが、マドゥロ大統領を拘束してアメリカに移送、アメリカで裁判にかけることにしたのには、さらに驚いた人も多かったことでしょう。アメリカのトランプ大統領に言わせると、これは軍事侵攻ではなく、アメリカで起訴されている被告を逮捕したという構図になるというのです。

 そもそも他国の国家元首を逮捕したりすることは国際法違反なのですが、トランプ大統領に言わせると、2024年のベネズエラでの大統領選挙は不正であり、マドゥロは大統領ではないというのです。国家元首ではないのだから逮捕・連行は認められるという理屈です。

 マドゥロ大統領は、実は第一期トランプ政権時代の2020年の段階でニューヨーク連邦地方裁判所に麻薬の密輸などの罪で起訴されています。その被告を逮捕したという理屈です。事実、米軍がベネズエラを侵攻した際、FBIの捜査官も同行。米兵に守られながらFBIの捜査官が逮捕したというのです。

 それにしても、アメリカで取り調べをしないままに他国の大統領を起訴していたというのも驚きです。日本では考えられない所業です。

 さらに、ベネズエラのような独裁国家に米軍が侵攻したり介入したりするときは「民主主義を実現するため」などと大義名分を掲げるのが、これまでのアメリカのやり方でしたが、トランプ大統領は「民主主義」などという言葉は一切使っていません。「ベネズエラに盗まれたアメリカの石油を取り戻す」と主張し、今後、ベネズエラの石油はアメリカが一括して管理し、売り上げをアメリカとベネズエラで分けると言っています。まさに石油目当ての軍事行動だったのです。

 ここで不可解なのは、マドゥロ大統領を支えてきたロドリゲス副大統領の言動です。マドゥロ大統領がアメリカに連行された直後には、「ベネズエラの大統領はマドゥロであり、アメリカは大統領を返せ」と主張していたのですが、その後、最高裁判所によって暫定大統領に任命された途端、姿勢を一変。今後はアメリカと協調していくと言い出したのです。

 これを見ると、事前にアメリカと裏取引をしていたのではないかと疑いたくなります。副大統領の間は大統領に忠誠を誓う姿勢を見せておいて、自分が大統領の実権を握ったら親米に変身するという構図だったのではないかというわけです。

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source : 週刊文春 2026年1月22日号