通常国会冒頭で解散し、2月に投開票へ――。その報道は瞬く間に広がった。だが、党内への根回しも不十分で、解散すれば年度内の予算成立も困難。批判が渦巻くなか、なぜ首相は動いたのか。背景には最側近の疑惑があった。

 

▶︎名代で妻が参加、自民調査に「支援なし」と虚偽回答、佐藤啓がひた隠す電話かけ大会

▶︎麻生も萩生田も知らなかった“冒頭解散”の相談相手

 

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「彼は、できない理由を考えるのではなく……」

 憲政史上最も長く首相の座に就いていた男が“彼”を評した言葉は、突如爆発音によって遮られた。

 側で誇らしげに耳を傾けていた“彼”は、思わず身をかがめる。

 少し間をおき、もう1発。

「危ない!」

 何が起きたのかも分からぬまま、“彼”は誘導に従って避難する。

 ふと振り返ると、つい数秒前までお立ち台の上でマイクを握っていたはずの男が、目を見開いたまま仰向けに倒れている。首付近から血が流れていた。

「総理! 総理!」

 だが、懸命の呼びかけに、反応が返ってくることはなかった。

 2022年7月8日午前11時31分。奈良市、大和西大寺駅前。安倍晋三元首相は凶弾に(たお)れた。参院選の応援演説中だった。

 応援を受けていた“彼”の名は、佐藤啓(46)。現在、憲政史上初の女性宰相である高市早苗内閣の官房副長官として辣腕を振るう人物だ。この時は参院議員として二期目への挑戦中だった。しかし、ちょうどこの事件当日、彼は元々別の集会に招かれていて――。

 
高市氏は12日、安倍氏(上)の慰霊碑に献花

 2026年1月9日、午後11時前。事務所の新年会を終え、お屠蘇気分で帰途に就いていた遠藤敬首相補佐官の携帯が鳴った。応答すると、読売新聞の関係者。ある内容を告げられた。

「今から書きます」

「ええ〜!?」

 一気に酔いがさめた遠藤氏は、思わず尋ねる。

「ホンマ? 何で? それ、また読売新聞の誤報にならへんの?」

 “誤報”とは昨年7月、参院選直後に読売新聞が「石破首相退陣へ」と報道した件だ。同社は後にお詫び記事を掲載した。すると相手も逆に尋ねてきた。

「遠藤さん、何か聞いてませんか?」

「知ってるはずないやろ!」

 その頃、別の政権幹部の携帯にも読売関係者からショートメールが届いていた。

〈衆議院解散しますよ〉

 それから間もなく、午後11時ちょうど。読売新聞のニュースサイトに衝撃的な記事が配信された。

〈高市首相が衆院解散を検討、23日通常国会の冒頭に…2月上中旬に投開票の公算〉

 報道は瞬く間に拡散され、同日のニューヨーク外国為替市場で対ドルの円相場は一時、1ドル158円台に下落。翌朝には、総務省が各都道府県選挙管理委員会に次の通達を発出した。

〈至急の連絡です。本日の朝刊等において、1月23日召集予定の通常国会冒頭に衆議院解散(略)旨の報道がありました〉〈各種スケジュールの確認や業者との調整を含めできる準備を進めておく必要があります〉

 まさに国を揺るがすスクープだった。だが、主な自民党幹部は、事前に何も聞かされていなかった。

「独り相撲のやりすぎだ」

「首相の後ろ盾の麻生太郎副総裁が、地元福岡での会合に出席後、西日本新聞の取材に、解散について『ないでしょうね』と一蹴した。露骨な怒りを滲ませていました」(西日本新聞関係者)

政権の“生みの親”も知らなかった

 不機嫌なのは麻生氏だけではない。選挙を取り仕切る鈴木俊一幹事長は、

「読売の報道のために解散することなんてできない!」

 さらには高市氏の盟友、萩生田光一幹事長代行すら、

「やるなら麻生さんや幹事長に言わなきゃいけないだろ。それをしてないのは、独り相撲のやりすぎだ」

 党の大物議員たちが挙って困惑しているのだ。

盟友の萩生田氏も呆れているという

 昨秋の内閣発足直後から高支持率を背景に「衆院解散・総選挙に踏み切れば大勝できる」と言われていた。記者会見等でも高市氏は「解散するのか」とたびたび質問されている。だが、「目の前で取り組まねばならないことが山ほど控えている。解散を考えている暇はない」と明言してきた。

 実際には周囲に“匂わせ”はしていたという。

「11月下旬に『私が年明けに解散すると言ったら、みんなどう思うんやろう』と、党幹部の反応を窺っていた。12月には解散を本格的に考え始めたようです。実はある人物に“年明け早々の解散”を進言されていました」(政治部デスク)

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source : 週刊文春 2026年1月22日号