第14回 すべては立花隆から始まった

2021年6月25日配信分

「週刊文春」編集長

 2日前、ジャーナリストの立花隆さんの死去がメディアで報じられました。報道の通り、立花さんは文藝春秋の元社員であり、「田中角栄研究」を月刊「文藝春秋」に掲載するなど、小社と極めてゆかりの深い方です。そして、私にとっては文藝春秋を志望するきっかけとなった方でした。

 高校生で政治オタクになった私は、「田中角栄研究」が田中内閣の退陣のきっかけとなったことを知ります。立花さんの著書を読んで、同じやり方でスクラップブックを作り、収納する棚も同じ種類のものを買いました。こうして記者志望となった私は、新聞社を中心に就活をしていましたが、出版社では唯一、文藝春秋を受けました。言うまでもなく、立花さんがいた会社だからでした。入社してからも、政治取材がやりたくて「週刊文春」志望。入社5年目で週刊に配属されると、「政治とカネ」の取材に没頭しました。

 月刊「文藝春秋」に在籍した際、立花さん担当のサポートで資料集めを一度だけ手伝ったことがあります。「今、俺は立花さんのアシをやっている」と妙にハイテンションになったことを覚えています。結局、一度もお話しする機会はありませんでした。ただ、非常にうれしかったことがありました。

 2016年1月、私がデスクとして担当した甘利明・経済再生担当大臣(当時)の金銭授受スキャンダルが「週刊文春」に掲載されます。甘利氏は1週間後に辞任しましたが、その直後、立花さんが、月刊「文藝春秋」の巻頭随筆にこう書いてくださったのです。

 <それにしてもあの週刊文春の報道はすごかった。雑誌の歴史に残る見事なスクープ記事といってよい。グラビア三ページ、活字六ページにわたる一大スクープで、金銭受け渡しについては現場写真あり、渡された現金五〇万円の生コピー写真あり。現場でのナマナマしいやり取りの情景描写あり(やりとりの録音あり)>

 あの角栄研究の立花さんに褒めてもらえた。もう、いつ会社を辞めてもいいと思ったぐらい感激しました。

 2018年に私が「週刊文春」の編集長になった当時、立花さんには「私の読書日記」を6週間に一度、執筆いただいていました。しかし、体調が悪化され、事務所から「連載を降りたい」とのお申し出がありました。立花さんは、月刊「文藝春秋」の巻頭随筆を勇退されており、「読書日記」が最後の連載でした。「読書日記」も退かれると、文藝春秋と立花さんは連載という形での関係はなくなってしまいます。そこで、私からこうお願いさせていただきました。

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source : 週刊文春

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