ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の連覇を目指す日本代表・侍ジャパンに、新たなスタメン論争が浮上してきている。日本代表は1次リーグC組最終戦となるチェコ共和国戦を9対0で圧勝。試合後に米・マイアミに向けてチャーター機で日本を出発した。チェコ戦では不振の近藤健介外野手(ソフトバンク)に代わって「2番・右翼」で先発した佐藤輝明外野手(阪神)が1回に二塁打を放つなど結果を残し、準々決勝では2人の先発起用問題がクローズアップされることとなった。

準々決勝以降のスタメン問題

 一挙9点を奪った8回の攻撃。その口火を切ったのは、佐藤の死球だった。

©文藝春秋

 チェコ2番手右腕のM・コバラ投手のカットボールが右前腕を直撃。ベンチを一瞬、ヒヤッとさせたが、顔をしかめながらも一塁に歩いた。そして途中出場の若月健矢捕手(オリックス)の右翼線二塁打で激走し、相手守備陣の乱れが出ると一気に先制のホームを走り抜け、そこから日本の猛攻が始まった。

「1本出て良かったです」

 こう語った第1打席の安打はチェコの右腕、O・サトリア投手の外角ストレートを逆らわずに左翼線に流した二塁打だった。

 佐藤はここまで3試合は全て代打での出場。オーストラリア戦でも8回1死から左翼線にタイムリー二塁打を放って結果を残した。

 そこで浮上するのが準々決勝以降での先発問題だ。

村上、岡本も復調…佐藤輝明スタメン起用ならライト?

 すでに1次リーグの1位突破を決めていたこの試合では直前のオーストラリア戦で1、2番を打った大谷翔平選手(ロサンゼルス・ドジャース)と鈴木誠也外野手(シカゴ・カブス)のメジャーリーガーコンビは先発を外れて休養。またこれまで全3試合に「右翼」で先発したものの、12打数無安打と主力組で唯一ノーヒットだった近藤もベンチスタート。その代役候補としてこの日は同じ阪神の森下翔太外野手と佐藤を1、2番で起用して“テスト”を行った形だった。

ベンチから試合を見守る鈴木、近藤、大谷 ©文藝春秋

「打線の流れ。1打席でも多くという気持ちもありました」

 森下と佐藤で1、2番を組んだ理由をこう説明したのは井端弘和監督だ。

「森下選手は若干代打などで力みがあった。なかなかバットが出てこない感じだったが、少しつかんで1本(3回に遊撃内野安打)出て、だいぶ楽になったと思う。佐藤選手だけは非常にリラックスしてスイングしていた」

 佐藤が死球を受けた8回で交代したことについては、大事を取っただけで問題なかったと説明し、状態の良さをこう語っている。

「大丈夫のようなので、向こう(米国)に行ったらしっかり調整して、今の状態にさらに上積みして欲しいですね」

 先発起用への“テスト”としては、十分な合格点だったということだ。

©文藝春秋

 それだけに米国に渡った準々決勝以降では、佐藤の先発起用という選択肢も現実味を帯びてきている。

 チェコ戦ではここまで結果がなかなか出なかった村上宗隆内野手(シカゴ・ホワイトソックス)に待望の一発も出て、岡本和真内野手(トロント・ブルージェイズ)もあと1メートルで本塁打という左越え二塁打を放った。そこでもし佐藤を先発で使うとなれば、右翼で起用されてきた近藤との比較となりそうだ。

今大会は「前回ほど時間がない」

 もちろん近藤の力を疑う関係者はいない。

 過去には打撃三部門の全てのタイトルを獲得した経験を持ち、通算出塁率4割1分7厘は王貞治(元巨人、4割4分6厘)、落合博満(元ロッテほか、4割2分2厘)に次ぐプロ野球歴代(4000打席以上)3位と現役最高の数字を残す実力者である。

今大会では自慢の打撃が鳴りを潜めている近藤 ©文藝春秋

 世界一に輝いた前回大会では栗山英樹監督が不振の村上を我慢して使い続けて、準決勝のメキシコ戦で復活を遂げさせたという例もある。そう考えれば近藤も我慢して使い続ければ、ちょっとしたきっかけで復活する可能性は十分ある。

 そして近藤が本来の力を取り戻せば、メジャーリーガー3人と並んで日本打線の核を担う存在であることも間違いない。

 ただその一方で今大会は前回ほど時間がないのも事実なのだ。

 前回大会は1次ラウンド4試合は同じだが、準々決勝も日本での戦いで、相手はイタリア代表だった。しかし今回は1次リーグが終わると米国に移動し、準々決勝の相手はドミニカ共和国かベネズエラとメジャーリーグのスーパースターが集まる強豪国である。

 この1試合の違いは日本にとって致命的な差になりかねない。

 そこが井端監督の決断を大きく分けるポイントとなりそうだ。

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source : 週刊文春