5月9日、ロシアはモスクワの「赤の広場」で第二次世界大戦の対ナチス・ドイツ戦勝記念日を祝う軍事パレードを実施。ウクライナ侵攻を巡り「勝利は我々のものだ」と演説したプーチン大統領だが、パレードの様相は前年と一変し、焦りを滲ませる内容だった。
戦勝80周年の昨年は中国の習近平国家主席ら20カ国超の首脳が出席した。ところが今年は、国連加盟国で首脳級が出席したのはベラルーシとラオス、マレーシアなど5カ国にとどまった模様だ。
北朝鮮軍も加わった兵士の行進に加え航空機の祝賀飛行も行ったが、戦車や装甲車など陸戦用兵器は動員せずに規模を縮小。陸戦用兵器が登場しないのは2007年以来だという。
米カーネギー国際平和財団のアレクサンドル・パウノフ上級フェローは、例年なら4月から行われるリハーサルが省略されたと指摘。プーチン氏が演説するタイミングについても厳しい情報統制が敷かれた。パレード4日前からは、モスクワ市内で携帯電話のデータ通信も遮断される徹底ぶりだった。

一連の措置は、パレードを狙ったウクライナの攻撃を警戒したからだ。両国は5月9日から3日間の停戦で合意したが、ロシアはそれに先立つ7日、「パレードが攻撃された場合は、キーウ中心部を報復攻撃する」と威嚇していた。
プーチン氏が怯える背景には、ウクライナの長距離攻撃能力の飛躍的な進化がある。昨年来、ゼレンスキー大統領は「スパイダーウェブ(蜘蛛の巣)作戦」と呼ばれる長距離攻撃を実施し、今年4月下旬には国境から約1700キロ離れたシャゴル飛行場をドローン攻撃。最新鋭のスホイ57を含む戦闘機を少なくとも4機破壊した。元オーストラリア陸軍少将のミック・ライアン氏は、その射程は約2000キロに及ぶと分析する。
「専属料理人の作ったものしか食べない」「位置を特定されないよう、携帯は持たない」などの噂が絶えないプーチン氏だけに、身辺に迫る危機に人一倍神経を使い、パレードを巡る異例の措置を講じたのだろう。
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source : 週刊文春 2026年5月21日号






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