23年の刑法改正で不同意性交等罪が新設され、被害者たちは性被害に対し声を上げやすくなった。だが――。今、法改正を悪用した令和型の美人局が急増しているという。男性たちはいかにして加害者とされてしまったのか。
「〇〇警察署の捜査第一課のものですが、あなたに不同意性交等罪で被害届が出ていましてね」
ある日の昼休み、見知らぬ番号からの着信に出た大手メーカー勤務の山野隆さん(仮名・29歳)に、ぶっきらぼうな声の男は早口でそう告げた。〇〇警察署は自宅の近くだが、山野さんは流行りの特殊詐欺かと思い、電話を切ろうとした。しかし次の言葉を聞いて躊躇した。
「昨年末、お友達や女性を交えて5人で飲酒しませんでしたか? 〇〇にあるご自宅にも移動されて朝まで一緒だったようですが」
山野さんには確かに思い当たる記憶があった。女性に報酬を渡して行う飲み会、いわゆる「ギャラ飲み」をしたのだ。ところが山野さんはその日、女性に指一本触れていなかった。電話口で自らの潔白を訴えたが、「そういう話は署で聞きますんで、来週出頭してください」と、愛想なく言われるばかりだった。
電話を切ると、濡れ衣を着せられたことへの憤りが込み上げてきた。しかしそれ以上に襲ってきたのは、「会社に知られたらどうしよう」という不安だった。
ここ最近、不同意性交のニュースは毎日のように報じられている。実際、昨年末に法務省が公開した犯罪白書によれば、2024年の不同意性交等罪の認知件数は1年間で3936件。前年比45.2%増だ。
背景のひとつとして指摘されるのが、23年7月の改正刑法施行である。それまでの強制性交等罪、準強制性交等罪などが不同意性交等罪、不同意わいせつ罪へ改められたのを機に、処罰対象が明確化されたのだ。
元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士が語る。
「かつての強制性交等罪や準強制性交等罪は、『暴行又は脅迫』を用いたり『心神喪失若しくは抗拒不能の状態』を利用して性行為に及ぶことが成立要件でした。しかし『抗拒不能の状態』という要件は抽象的で、何が犯罪になるのか必ずしも明確ではなかった。そのため被害を受けても『処罰対象ではないかもしれない』と被害申告を諦めたり、捜査機関が立件に消極的になるケースもあるとされてきました。
そこで刑法改正後の不同意性交等罪は、同意なき性行為につながる『経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力』や『予想と異なる事態に直面させることによる恐怖・驚愕』など8つの類型を明記し、被害者にも警察にも、性犯罪を認知しやすくしています。また、改正前の『性交等』は『性交、肛門性交、口腔性交』に限られていましたが、法改正で『膣若しくは肛門に身体の一部や物を挿入する行為』も追加されました」
警察庁が被害者の心身負担の軽減や積極捜査を促す旨の通達を現場の警察官向けに出していることもあり、被害証言のみで容疑者逮捕に踏み切る事例も増えている。つまり法改正により、これまで泣き寝入りせざるを得なかった被害者が、声をあげやすい環境が整ったと言える。

だが、被害者のための法改正を悪用し、事後に「不同意だった」と主張して示談金を受け取る、いわば令和型の“美人局”が相次いでいるというのだ。冒頭に紹介した山野さんも、あやうく被害に遭いかけた一人である。
本人が振り返る。
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source : 週刊文春 2026年6月18日号






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