「善か悪かは、僕はどちらでもいいと思っています。依頼者がヤクザや半グレであろうと薬物中毒者であろうと属性は関係ない。犯罪組織の人間だから守るべきではないと言われても、世間から悪人と思われる人間であっても、適正な刑事手続きを受ける権利がある。刑事弁護士として彼らを守るべきという立場です」
 

 迷いなく淡々と語る姿は、あの人気ドラマの主人公さながらだ。
 

 ネットフリックスで配信中の人気ドラマ『九条の大罪』。真鍋昌平氏の漫画が原作で、裏社会に蠢く住人や前科者に“守護神”として頼られる弁護士の奔走ぶりや葛藤を描く。

 

 柳楽優弥演じる主人公の弁護士・九条間人(くじょうたいざ)は、法と道徳の極限で際どい判断を下し、世間から悪人とみられる依頼者に最善の結果をもたらすことから「悪徳弁護士」とも呼ばれる。

 

 九条のような弁護士がいるのは何も漫画やドラマの世界だけではない。実社会にも、一般的な弁護士が敬遠する厄介者たちに寄り添う「リアル九条」とも呼べる弁護士がいる。その一人が、今回インタビューした上野仁平弁護士(43)だ。刑事弁護に特化した「JIN国際刑事法律事務所」(東京都)の代表を務める。

「驚くほどリアルだった」「“闇落ち”してしまう弁護士は確かにいる」

 ドラマ『九条の大罪』の感想を聞くと、「驚くほどリアルだった」と語る。

「ちょうど、自宅で妻に刑事弁護の考え方を話した直後に、第1話を観たんですよ。そしたら、妻に『あなたがさっき話していたような考え方だったね』と言われて。いくつか違う点はあるものの、原作者は本当によく取材されているなと感心しました。ドラマにも登場しますが、依頼者から持ち掛けられた犯罪に加担するなど“闇落ち”してしまう弁護士は確かにいますしね」

上野弁護士(事務所HPより)

「『黙秘すれば不起訴になると思います』はよく言いますね」

〈20日でパイ〉

 作中で九条や依頼者が頻繁に口にするフレーズ。“パイ”は釈放を意味する隠語だ。九条が依頼者に「完黙(完全黙秘)」を貫くよう指示を出し、〈20日でパイ〉を狙うシーンが多々登場する。

 最大20日間の勾留期間に依頼者が黙秘を続けて検察が決定的な証拠を得られなければ、不起訴処分として釈放に持ち込める。

「ヤクザや反社といった逮捕慣れしている人たちは留置場の中でパイや完黙、叩き(強盗)とか、そういう隠語を使いたがるんですよ。だけど僕らが『完黙すればパイです』って言うことはほとんどない。正しい法律用語ではないですし、なんか弁護士が使うのは恥ずかしいというかダサいというか。『黙秘すれば不起訴になると思います』はよく言いますね」

 作中では九条の「完黙」の指示に従った依頼者が次々に釈放、不起訴を勝ち取っていく。上野氏は「完黙」指示にとどまらず他の手法も駆使するという。

公式SNSより

「最近は取り調べ自体を拒否することが刑事弁護業界で盛んになっています。逮捕されて留置場に収容されると、取り調べのために警察が呼びに来る。その時に『行きません』って言わせるんですよ。これは弁護士の指示が大半ですが、本人が自発的にやる場合もあります」

 一体、どういうことか。

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source : 週刊文春 電子版オリジナル