週刊文春 電子版

「次の総理」の正体 河野太郎、野田聖子、岸田文雄、高市早苗

「週刊文春」編集部

PICKUP!

ニュース 社会 政治
本命視される河野氏
本命視される河野氏

 菅首相が退陣を表明し、情勢が一変した総裁選。だが、本命・河野ワクチン相には「3つの落とし穴」が待ち受ける。かたや、意欲を示す野田幹事長代行には夫の過去を巡る「決定的文書」が。「次の総理」の正体に迫る――。

 

《河野太郎“3つの落とし穴”はパワハラ常習、側近、菅》
《野田聖子のウソを暴く「夫は元暴力団員」警察庁文書》
《岸田文雄 コロナ公約は「絶対無理」保健所の悲鳴》
《高市早苗 安倍が笛吹けど派閥踊らぬ“あの一件”》

解散権と人事権を封じられた
全ての画像を見る(10枚)

「(記事は)情報漏洩だろ。俺は(官僚への)手を緩めないから。厳しくやる」

 河野太郎ワクチン相(58)は、親しい政界関係者にそう漏らしたという。

 小誌が9月2日発売号で報じた約28分間の「パワハラ音声」。エネルギー基本計画を巡るオンライン会議で、河野氏が資源エネルギー庁幹部に対し、「日本語わかる奴、出せよ」と言い放つ場面などを詳細に報じた記事だった。

 河野氏が狙うのは、「次の総理」。自らの政権でも「官僚に厳しく当たる」という意思表示なのか――。

 永田町に激震が走ったのが、9月3日午前のことだった。菅義偉首相が党役員会で、次期総裁選(9月29日投開票)に出馬しないことを表明したのだ。

「引き金は8月31日夜、『9月中旬に解散に踏み切る意向』と報じられたことでした。これに党内が猛反発。安倍晋三前首相も電話で菅首相に『解散して総裁選を先送りにしたら、選挙でぺんぺん草も生えなくなる』と説得しました。結局、翌9月1日には『総裁選前に解散しない』と答えるほかなかった。同時に、首相は人事刷新を模索していましたが、幹事長ポストに想定していた河野氏らから色よい感触を得られませんでした。2日夜には、佐藤勉総務会長からも『役員会での人事一任は厳しい』と伝えられた。総理の権力の源泉である解散権と人事権、双方を封じられてしまったのです」(政治部デスク)

 9月2日夜、赤坂の議員宿舎。最後は「孤立した首相が唯一信頼する」(首相の知人)という夫人とやり取りし、宰相の椅子を降りることを決めたのだった。

「首相が総裁選不出馬を決めたことで、現在、名乗りを上げている面々から『次の総理』が決まることになります」(前出・デスク)

 果たして、彼らはどんな政治家か。小誌は「次の総理」の正体を徹底調査した。

「最有力候補は、河野氏です。共同通信が実施した『次の首相に相応しい人物』を尋ねる世論調査(9月4日、5日)では、トップ(31.9%)。党内でも当落線上にいる中堅・若手を中心に、派閥横断的に支持する声が高まっている。さらに、共同の調査で2位(26.6%)の石破茂氏も出馬せず、河野氏支持に動くと見られます」(同前)

 菅首相が退陣を表明するや、9月5日には竹下派の石井準一参院議員ら他派閥のベテラン議員と面会を重ねるなど、精力的に動く河野氏。だが、その行く手に待ち受けるものがある。

「3つの落とし穴」だ。

菅首相も河野支持を周辺に表明

河野政権では進次郎官房長官

 1つ目は、「パワハラ常習」問題。冒頭で触れたように、小誌は9月2日発売号で、エネ庁幹部に対し、高圧的な物言いを繰り返す河野氏の姿を詳報した。エネ庁幹部が説明を試みようとしても「はい、ダメ」と切り捨てる。約28分間の会議で、河野氏は「はい、ダメ」「はい、次」を計13回も繰り返していた。

 しかし、河野氏の「パワハラ」的な振る舞いは、この時ばかりではない。

 官邸関係者が証言する。

「外相時代は、しょっちゅう官僚を『馬鹿野郎!』と怒鳴りつけていた。防衛相時代には、陸上自衛隊の課長らに『君たちの英語能力のなさは、国防を危うくするね。もっと真剣に英語をやれ』と嫌味な感じで命令していたそうです」

 麻生派関係者も続ける。

「派閥の領袖・麻生太郎氏も『河野は役人にパワハラをするから、チームとしては戦えない』とこぼしていたほどです。ただ、その麻生氏にはそうそう歯向かわない。弱い立場の者にばかり強い態度に出るのです」

 2つ目が「側近」。例えば、第2次安倍政権では菅官房長官や今井尚哉秘書官を筆頭に、側近たちが入念に準備を重ね、政権発足後はそれぞれの立場からトップを支えてきた。翻って、河野氏の場合はどうか。

「『一体、どう組閣するのか』と言われるほど有能な仲間がいない。強いて挙げれば、小泉進次郎環境相ですが……」(前出・デスク)

 小泉氏と言えば、菅首相の退陣表明まで、5日連続で面会。3日夜、記者団に「こんなに仕事をした総理はいない」とこぼすと、なぜか涙を流したのだった。

「わざわざ首相動静に載る形で面会し、自らが首相に引導を渡したことをアピール。その上で自己陶酔に浸る小泉氏らしい場面でした。河野氏は小泉氏を官房長官に起用したい考えを持っていますが、安倍政権の菅官房長官のように『首相の盾になって守る』タイプでもないのは、今回の“涙演出”で明らかです」(同前)

涙を見せた進次郎氏

 そんな河野氏が著書に〈俺よりすごい、自民党一の「脱原発」男〉と推薦文を寄せるのが、当選3回の秋本真利衆院議員だ。

「秋本氏は市議時代、河野氏に誘われ、国政に転じました。本人曰く『父親が菅義偉で、兄が河野、俺が弟』。HPでは『再エネ族』を自称。“魔の3回生”で、マスクの入手が難しかった昨年4~5月、選挙区で秘書がマスクを配り、公職選挙法に抵触する疑いが報じられました。河野氏の周囲には、こうした自らの選挙が危うい中堅・若手議員しかいないのが実情なのです」(自民党関係者)

 3つ目の「落とし穴」がほかならぬ「菅」だ。

〈元会津小鉄会昌山組幹事〉

「河野氏と進次郎氏を引き上げてきたのは、同じ神奈川組の菅首相です。河野氏にはブレーンや側近がいない一方、安倍氏や麻生氏との関係も微妙で、官邸を長年仕切ってきた首相に頼らざるを得ない。しかし、国民から厳しい視線が注がれる首相の支持はマイナスになりかねません」(同前)

 河野氏の前に「3つの落とし穴」。事務次官経験者の一人は「民主党政権の二の舞になる」と危惧する。

「外相時代は多くの国を巡る『スタンプラリー外交』と揶揄され、防衛相時代は『防衛品オークションで580万円を稼いだ』と自慢していましたが、結局、パフォーマンス優先で実績は乏しい。しかも、パワハラによって官僚にここまで嫌われていては、政権運営にも支障が出てくるはずです。そうした中で『脱原発と脱炭素の両立』など現実味に乏しい政策を掲げる河野氏に、『普天間基地の県外移設』を掲げた鳩山由紀夫元首相に似た危うさを感じざるを得ません」(同前)

 河野氏に事実関係の確認を求めたところ、期日までに回答はなかった。

〈改めて「家族に負担をかけることになるな」と思い、夫に「立候補していい?」と聞いた。夫は何の躊躇も無く「もちろん!」と答えてくれました〉

 9月7日発売の雑誌「AERA」でこう意気込みを語ったのは、野田聖子・幹事長代行(61)だ。

野田氏

「これまで総裁選のたびに出馬の意向を示してきたが、毎回、20人の推薦人を集められず断念。二階派から推薦人を貸してもらう狙いです」(自民党担当記者)

 野田氏が首相に就任した場合、ファーストジェントルマンになるのが、出馬を後押ししたという7歳年下の夫・文信氏。ただ、森友問題における安倍昭恵夫人のケースからも分かるように、最高権力者の配偶者は国政に大きな影響を与え得る立場だ。ところが――。

〈野田聖子総務大臣 夫は元暴力団員〉

 小誌は17年9月28日号で、文信氏がかつて指定暴力団「会津小鉄会」傘下の「昌山組」に所属する暴力団員だったことを報じた。「週刊新潮」も18年8月2日号で、同様の内容を報じている。だが、野田氏は新潮の取材に「(夫が元暴力団員である)事実はございません」と回答。その後、文信氏は「暴力団に所属していた事実はない」として、小誌と新潮を名誉毀損で提訴した。

7歳年下の夫・文信氏

「野田氏も19年秋段階では『資料を見せてもらったけど、裁判官、気の毒って感じで』と余裕を見せていました」(政治部記者)

 しかし、小誌は昨年4月、裁判で“決定的証拠”を提出していた。それが、〈暴力団個人ファイル〉と題された警察庁の内部文書。92年に暴力団対策法が施行され、厳罰化の方向で改正が重ねられてきた。11年には全都道府県で暴力団排除条例が定められ、暴力団と頻繁に交際を行う密接交際者も取り締まりの対象となっている。

 そうした中、暴力団への所属の有無が直接的に確認できるデータベースが、この個人ファイルだ。そこには、こう記されていた。

〈氏名 木村 文信〉

〈木村〉は、文信氏の旧姓だ。その隣には、

〈登録責任府県 京都〉

〈個人種別 暴力団〉

 との文言。会津小鉄会は京都市左京区に本部を置いている。さらに、生年月日や本籍地などの個人情報が続く。そして最後には、

〈元会津小鉄会昌山組幹事。昌山組組織消滅。〉

 と、明確に記載されている。すなわち、警察庁の中枢で、文信氏が元暴力団員であるという情報が共有されていたのだ。

警察庁の「暴力団個人ファイル」

 証拠は、それだけではない。新潮側の証人として“ある人物”が出廷していた。

〈昌山組に、野田聖子衆議院議員の夫である野田文信氏が一時期所属していたことは間違いありません〉

 陳述書にこう綴っていたのは、昌山組の元組長、昌山実氏だ。その昌山氏が今回、小誌の取材に応じた。

「ワシが証人尋問に立った日、法廷で顔を合わせた。『おう、久しぶりやな。懐かしいのぉ』と声をかけたが、アイツ(文信氏)は目すら合わせへん上に、尋問では『(昌山氏には)会ったことはありません』と言う。それにはカチンときたけど、法廷やから知ってることだけを話したんや」

 文信氏が昌山組に加わったのは、30年ほど前だという。

「木村の最初の肩書は『幹事』。といっても幹部以外はみんな幹事やから、雑用係みたいなもんや。毎年、ワシの自宅で新年会をやってたけど、木村は宴会場の隅っこの方に座っとった。顔を見て『男前やな』と思ったことを覚えとる」(同前)

小誌の取材に応じる昌山組元組長の昌山氏

 昌山組は99年に組内部の人間関係を巡る殺人事件が発生し、00年3月に解散。それ以前に、文信氏も組を抜けたという。

高市氏と岸田氏を連続直撃

 今年3月、東京地裁は小誌報道に対し、文信氏が昌山組に所属していた点については真実相当性があると する判決を下した。さらに4月、新潮に対しても同様の点について真実と認められるとする判決を下した。

 つまり、異例なことに裁判所が、首相候補の夫が元暴力団員だと認定したのだ(文信氏は判決を不服として双方の裁判で控訴。小誌も一部判決を不服として控訴)。

 野田氏に見解を尋ねたが、以下のように回答した。

「引き続き夫を信じております」

 夫の“ウソ”を信じるという野田氏。民間人なら夫婦愛で許されるかもしれない。だが、元暴力団員などへの厳しい監視は、他ならぬ野田氏ら国会議員が可決した暴対法に基づき、政府が強く推し進めているものだ。その最高責任者である首相夫妻がウソをつき続けていては、宰相としての適格性が厳しく問われてくる。

 一方、野田氏と並び、女性初の総理を目指す高市早苗前総務相(60)。彼女がすがるのは、ここに来て活動を活発化させる大物だ。

「安倍氏です。以前は稲田朋美元防衛相に期待していましたが、最近は『女性はあと、高市さんしかいないからねぇ』と漏らしていた。若い頃から2人は同じ清和会所属のタカ派。彼女も普段から『アベちゃん』と親しみを込めて呼んでいます」(清和会関係者)

高市氏

 06年、第1次安倍政権で沖縄北方相として初入閣。第2次安倍政権でも、女性初の総務相に就任した。

「安倍氏の支持を受けた高市氏ですが、清和会の細田博之元幹事長や萩生田光一文科相らは『高市氏をやりたくない』という意向を示している。背景にあるのは、11年に派閥を抜けた経緯です。当選回数を重ねるとパーティ券のノルマも増える。そのことを嫌がったから、とも言われました。こうした行動が森喜朗元首相らベテラン勢の怒りを買ったとされます」(同前)

“安倍氏ベッタリ”にもかかわらず、派閥が思うほど動かない高市氏。9月7日午後、本人に話を聞いた。

――安倍氏ベッタリでは?

「サナエノミクスが恥ずかしくて、わざとニューアベノミクスと言ったんですが。安倍さんとは多い時で週に2回。1時間、2時間とか議論を積み重ねてきた。強い経済を作らないと、と」

――派閥を出た経緯は?

「(派閥の領袖だった)町村(信孝)先生から『来年の総裁選に出る』と言われていましたが、私は安倍さんに『もう一度挑戦されませんか』とお願いし続けていた。『会長の応援はできません』と言えば、町村先生にすごい恥をかかせる。『派閥の会費は払えない』とか苦渋の言い訳を言って出たんです。(パーティ券も)ちゃんと売っていた。期が上がるごとに増えていくので、その分は義務を果たしていました」

――森氏には挨拶は?

「森さんには、(出馬宣言を載せた)月刊文藝春秋の発売日にお目にかかりました。『いいじゃないか。なかなか。頑張れよ』と」

 だが、安倍氏にすがりたいのは、高市氏ばかりではない。昨年の総裁選で苦杯をなめた岸田文雄前政調会長(64)も同じだ。

岸田氏は昨年の雪辱なるか

「昨年は安倍氏からの禅譲に期待していましたが、最後は安倍氏に裏切られ、清和会も菅支持に回った。今回は“二階切り”の表明が好意的に受け止められ、総裁選を一時的にリードしました」(前出・デスク)

 その後も積極的にメディア露出を重ねた岸田氏だが、9月2日にTBSのBS番組で、森友問題について「国民が納得するまで説明を続けることが大事」と語った。

「これが『森友の再調査を明言した』と受け止められ、評価する声も上がった。ただ、安倍氏は『森友は終わったこと』と言い切れない姿勢に、『まだフラフラしてるのか』と失望していました」(安倍氏周辺)

 翌3日、菅首相が総裁選不出馬を表明すると、世論の支持が厚い河野氏が出馬を決め、頼みの安倍氏も高市氏支持を表明したのだ。

 苦境に立たされていく岸田氏。「政策で勝負したいところ」(岸田派議員)だが、“目玉公約”として掲げた「予約不要の無料PCR検査所拡大」に対し、こんな声が噴出している。

「そんなことをやれば、保健所は機能停止に陥ります」

 悲鳴を上げるのは、23区の現役保健所職員だ。

「無料PCR検査は、現在の保健所のマンパワーではとても捌けません。もし国から全額補助金が出たとしても、場所や医療従事者を含めた人員の確保を保健所が担うのは絶対無理。岸田先生は耳触りの良い政策を並べているだけです」

 安倍氏の裏切りや、保健所職員の訴えをどう受け止めるのか。9月6日夕、岸田氏に話を聞いた。

――コロナ対策に保健所から批判の声が出ている。

石破氏は二階氏の言いなりか

「保健所だけで全部やるのは限界があるのでしょう。(無料検査などを)生活の中に取り入れるとなると、民間との連携が必要でしょう。経済を動かすPCR検査にしないといけない」

――安倍氏は高市氏の支援を表明。裏切られた?

「あの派閥にも色々な意見があると聞きます。裏切られたとは思っていません」

――TBSの番組で森友問題の再調査を言明されたが。

「(珍しく色をなして)言明していない! 私は『説明します』と言ったんです。調査はもう行政がやって、いま裁判やっているわけです。結果を踏まえ『必要であれば丁寧に説明します』と言っている。かなり誤解を招き、私もちょっと困っておりますので。はい!」

――安倍氏には謝罪を?

「えーと……。これは、関係者の皆さんには説明をいたしました……。安倍総理(ママ)には8月前半のお盆前、夏のご挨拶に行きました。広島のレモンサイダーを持って」

――河野氏のパワハラについて。岸田さん自身は?

「ははは、パワハラぁ? 私はしていないと信じています。(河野氏は)スター性も兼ね備えている。ただコロナで国民の心は疲れている。国民に寄り添い対話を大事にする。こういったタイプのリーダーが求められていると信じています」

 岸田氏が今回“二階切り”に踏み切ったのとは対照的に、煮え切らない態度を続けるのが、石破氏(64)だ。9月4日には二階俊博幹事長を訪ね、総裁選への支援を要請したと見られる。

石破氏

「人数の少ない石破派ですが、平将明議員などは河野氏支持を表明。加えて、派内からは『二階派の力を借りれば、守旧派に見える』などの声も上がっていました」(石破派関係者)

 それまでも、小誌の取材に二階氏について、

「稀有な政治家だよね。長いからダメだとか辞めさせろという人はいるけど、誰が他にできるのかと言えば、なかなか難しくないかな」

 と語っていた石破氏。9月6日昼、改めて二階氏との関係について尋ねた。

――二階氏の言いなりになるのでは、という声がある。

「はッ、それはどういうことですか。私、幹事長の時に曲げて(誰かの意見を)通したことは一度もない」

――言いなりにならない?

「当然です。そうしないと党が党でなくなる。できないことはできない。(二階氏は)そんなゴリ押しする人じゃありませんよ」

 が、この取材の直後から、総裁選に出馬せず、河野氏を支援する動きが急速に取り沙汰されてきた。

「党員たちの支持は今でも河野氏以上とされています。しかし、この局面で出馬しなければ“首相候補”としての石破氏は終了するでしょう」(前出・デスク)

 河野氏、野田氏、高市氏、岸田氏、そして石破氏。この中から「次の総理」が選ばれることになる。

source : 週刊文春 2021年9月16日号

この記事の写真(10枚)

文春リークス
閉じる