週刊文春 電子版

高齢者「症状別」全身チェックリスト それは認知症、心筋梗塞、糖尿病かも

「週刊文春」編集部
ニュース 社会 医療 ヘルス

「ワクチン打ったから大丈夫」? いやいや大事なことを忘れていませんか。この1年半、病院から足が遠ざかっている間に、別の病気が忍び寄っているかもしれないのです。リストに思い当たるふしがあれば、まず診察を。

 1年半以上続くコロナ生活。感染を警戒した結果、医療機関への“受診控え”が長期化していることも高齢者にとっては問題だ。

 医学誌「ランセット・オンコロジー」によれば、英国では昨年、潜在的ながん症状のある人の45%が医師へ連絡しなかったと推定される。その結果、コロナ感染者の治療が優先されたこともあり、同国で手術を待つ患者は460万人以上。約30万人が1年以上待機している。受診控えが招いた厳しい現実だ。

 以下の表は、自覚症状別に、疑うべき疾患をまとめた全身チェックリストだ。当てはまる症状があれば医師へ相談し、検診を受けることこそ健康維持の第一歩だ。

 

 がんに限らず、高齢者は高血圧や糖尿病などの生活習慣病を放置すると命取りになる。2017年に糖尿病の患者数は328万人を突破。過去最多を更新している。

 ホームオン・クリニックつくば院長の平野国美医師が注意を促す。

「糖尿病の自覚症状には、疲労感、喉の渇き、頻尿など。また、最近風邪をひきやすいとか、傷が治りにくいなどもありますが、どれも、不特定的な症状です。気になる場合は主治医と相談し、採血や尿検査を」

 血糖値が高くなると、ドロドロになった血を体内で薄めようと、水分を欲して喉が渇く。特に、基礎疾患を治療中の高齢者が、内服薬を切らしたまま、受診しないでいると危険だ。

 日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック常任顧問で、総合内科専門医の山門實医師が指摘する。

「高血圧、糖尿病、高脂血症などは、痛みを伴わないので軽く考えてしまいがちですが、症状が出てからでは遅いのです」

 頭部の疾患も気になる。山門医師が続ける。

「高齢者の健康寿命を縮める三大疾患は、脳梗塞、認知症、フレイル(加齢により身体・認知機能が衰えた状態)です。この中で前兆が分かりやすいのは脳梗塞。一番多いのはめまいです。そして、歩いている時のふらつき会話をしている時に言葉が出てこない持っているものを落とすといったことも挙げられます」

 17年に脳血管性疾患で亡くなったのは約11万人。うち、脳梗塞の患者が約6万2000人と最も多かった。めまいやふらつきの症状を「トシのせい」と侮るのは、大きなリスクを伴う。

 脳血管性疾患は、介護が必要になった主な原因の第2位だが、第1位は、やはり認知症だ。

 現在、高齢者の4人に1人が認知症またはその予備軍とされている。単調なステイホーム生活の長期化で、増える可能性もある。

 認知症を疑うべき症状とは何か。介護アドバイザーで、総合情報サイト「AllAbout」解説員の横井孝治氏はこう語る。

「例えば、冷蔵庫に卵があるのにスーパーの特売でまた卵のパックを買ってくるなど、今までちゃんとできていた買い物、料理、洗濯といった家事ができなくなる。入浴や化粧が億劫になる人もいます。家族が観察し、本人の以前の生活と比較することが大切です」

 知っている人の名前が思い出せない、物が見当たらないことを他人のせいにする、なども要注意だ。

 家にひきこもると認知症の発症リスクが上がると指摘するのは医療ジャーナリストの森田豊医師。

「対人接触に乏しい人は、アルツハイマー型認知症の発症率が8倍高くなると言われています。自粛によって人との会話や接触が減っている現状は、より警戒すべきと言えます」

 睡眠と認知症の関係も見逃せない。国立長寿医療研究センターの研究では、75歳以上の場合、午後9~11時に寝る人に比べ、午後11時以降に床へ就く人の認知症発症リスクは、1.83倍も高いという。

 その点でも「安眠」は重要だが、睡眠時のいびき睡眠中に呼吸が止まって目が覚める人は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある。

「無呼吸によって血液中の酸素濃度が下がり、『低酸素血症』が生じて心拍数や血圧が上昇するなど、高血圧症のリスク因子になります」(森田医師)

 また、自律神経が緊張状態になって心筋梗塞、慢性心不全などの循環器病の要因になる可能性も指摘されているという。

「息切れ」はあぶないサイン!

 

 日本心臓財団によると心不全の罹患者数は約120万人。大阪・市立貝塚病院総長の片山和宏医師が話す。

「心臓が弱ると、1回の拍動あたりの血液を送り出す量が減るため、たくさん脈を打たないといけなくなる。だから心不全は脈拍数が増える。それに伴い体内の様々な場所への血液の流れがうまくいかなくなり、むくみや倦怠感が出ることもあります」

 心筋梗塞を疑う症状は他にもある。さいとう内科・循環器クリニックの齋藤幹院長が語る。

胸の痛み夜間の呼吸困難息切れもあります。家族が見て、ハアハアしていたり、肩で息をしていたら、循環器の疾患に限らず医療機関での診察をお勧めしています」

 息切れは、心筋梗塞の他に、肺にまつわる疾患も気になるところだ。池袋大谷クリニックの大谷義夫院長が解説する。

「年齢とともに肺の機能は落ちます。息切れの原因として考えられるのは、喫煙などによって生じるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が多い。安静にしていれば大丈夫だが、坂道や階段では息が切れる、というのは最初のサインです」

 高齢者にとっては、やはりがんも心配。日本で罹患者数が最も多いがんは、大腸がんだ。

 初期症状はほとんどみられないので、便潜血反応の検査を受け、陽性の場合は内視鏡の検査を受けるのが一般的だ。大腸がんが進行していると、血便が出る。さらに悪化すると、大腸の内腔が狭くなり、便が細くなる便秘気味になるなどの症状も出るという。

コールタールのような黒くて粘液状の便が出ると胃潰瘍や、十二指腸潰瘍から出血している場合もあります」(片山医師)

 尿に関する症状も悩みのタネだ。夜中に何度も尿意で起きる人も多いが、どういった疾患が疑われるか。RESM新横浜・睡眠呼吸メディカルケアクリニック院長の白濱龍太郎医師が語る。

「不眠症、睡眠時無呼吸症候群による交感神経過緊張によるもの。あるいは神経因性膀胱、糖尿病、加齢に伴う筋力低下もあると思います。さらに男性は前立腺肥大、女性は膀胱炎、子宮筋腫等による圧迫に伴う頻尿が想定できます」

 高齢者には付きものの、ひざの痛みはどうか。

「骨粗鬆症の前兆である場合があります。あと、座っていて、立ち上がろうとした時にスッと立てない。これは筋力の低下。フレイルの前兆として気をつけたい」(山門医師)

 ひざの痛みは変形性膝関節症も疑われる。高齢者は加齢に伴い筋力の下がるサルコペニアの可能性もあるので、早めに整形外科や整骨院を訪れたい。

 山門医師は、高齢者に向けてこう助言する。

「過去の災害時、お年寄りが病院に行けなくて薬がなくなる。それで脳卒中、心筋梗塞を起こしてしまう例がありました。治療を中断すれば病気が悪化するのは当然です。今は電話診療もできる時代ですから、ぜひ活用していただきたい」

 不調を感じたらまず医師に相談。その原則は、いつだって変わらない。

 

source : 週刊文春 2021年9月30日号

文春リークス
閉じる