“無理ゲー”。攻略が極めて困難なゲームを指す俗語だ。リベラル化する社会で、自分らしく生きることの困難さを指摘した近著『無理ゲー社会』(小学館新書)が話題の作家・橘玲氏は、皇室制度の維持も“無理ゲー”になりつつあると指摘する。
ご結婚の会見はテレビで見ましたが、お二人とも毅然と対応されたと思います。ところがネットでの反応は、「誤った情報にもとづく誹謗中傷」といわれたことへの反発ばかりで、まさに「誹謗中傷」のコメントが殺到しました。
ネットニュースのコメント欄やSNSなどで見られる皇族への批判にもっとも近いのは、生活保護(なまぽ)受給者へのバッシングでしょう。両者に共通しているのは、「自分たちがわずかな収入で苦しい生活をしているのに、税金で恵まれた暮らしをするのは許せない」という怒りです。
王室や皇室は「身分」ですが、いまやそうした「身分格差」を認めず、誰もが平等であるべきだと考える層が増えている。「結婚するだけで1億円を超える一時金をもらえるなんて許せない」という批判はその典型でしょう。皇族が「雲上人」だった昭和の時代には考えられない事態です。
私はリベラル化を「自分の人生は自分で決める」という価値観だと定義していますが、皇室自体も明らかにリベラル化しています。眞子さんは周囲の反対にもかかわらず自分が選んだ男性と結婚し、妹の佳子さまも「籠の鳥同然」と発言したと報じられています。
まさに「自分らしく生きたい」という悲痛な叫びですが、それに対してネットでは「甘えている」という批判が殺到する。自由に生きたいと望む皇族に対して、リベラル化する世論が「上級国民」批判をする構図です。
戦後の日本人はずっと、皇室に「理想の家族」を投影してきました。その背景には、価値観の多様化によって実際の家族が解体している現実があるのでしょう。
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source : 週刊文春 2021年11月4日号