日本維新の会の片山虎之助共同代表(86)が11月27日、体調不良を理由に共同代表を辞任した。11月初旬に倒れて入院、意識混濁の状態が続いており、議員辞職することも同日の臨時党大会で報告された。国会議員最高齢の片山氏は来夏の参院選で6選を目指し、「やる気満々だった」(旧知の関係者)が、無念の政界引退となった。

かつては「瞬間湯沸かし器」と言われるほど短気だった

 政党に翻弄され続けた政治家人生だった。東大卒業後の1958年、当時の自治庁に入庁。30年勤めた後、89年参院選に地元・岡山から自民党公認で初当選。2001年から初代総務相を務めたほか、「参院のドン」青木幹雄氏の懐刀としても活躍。次のドンと見込まれたが、07年参院選で、小沢民主党が擁立した姫井由美子氏の「姫の虎退治」に遭って落選した。

「『頭を下げるより、ふんぞり返る』と揶揄されるほど偉そうだったが、この厳しい選挙を転機に頭を下げるようになった」(同前)

 74歳で迎えた10年参院選で全国比例での政界復帰を目指したが、「比例70歳定年」という自民党の内規に阻まれた。「自分が執行部にいる時に内規を変えておけば」と悔やんだが、後の祭りだった。

 だが、人間万事塞翁が馬。自民党を離党し、石原慎太郎氏らの「たちあがれ日本」に入党し、参院比例区で当選。その後は、旧日本維新の会、維新の党、日本維新の会など政党の離合集散・党名変更に飲み込まれた。14年、旧維新が橋下徹氏側と石原氏側に分党する際には、橋下氏から「まとめ役をやって欲しい」と依頼され、快諾。今回の報を受け、橋下氏は「片山さんは石原さんのグループだったが、若い世代を支える感じで来てくれ、引っ張ってくれた」と賛辞を惜しまなかった。

 時には失言も。16年春の熊本地震では「衆参W選になるのかならないのか、政局に影響を与える。タイミングのいい地震だ」。記者団に「口が滑った。参院選の票を減らすなあ。耄碌(もうろく)ジジイの放言だ。大目に見てくれ」と頭をかいたが、同年の参院選では次男の大介氏が維新で兵庫県から当選。「当時は兵庫県知事も神戸市長も自治省の後輩で片山氏の影響力もあった。強(したた)かに息子に政治家の座を与えた」(政治記者)。

 片山氏の共同代表辞任を受けて後任に就いたのは馬場伸幸氏。前幹事長とはいえまだ当選4回だ。橋下氏の政界復帰は見通せず、松井一郎代表は再来年春の市長任期満了後は政界引退の意向だ。先の衆院選では追い風に乗り、一気に約4倍の41議席を得た維新。貴重なベテランが去って、新参者たちをグリップできるだろうか。

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source : 週刊文春 2021年12月09日