ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから1ヶ月が経過しようとしている。
ウクライナの国土は激しい戦闘のため焦土と化し、多くの尊い命が奪われた。ロシア軍は首都キエフ陥落を目指し、攻勢をいっそう強めている。
そんな中、キエフ市のビタリ・クリチコ市長が「週刊文春」のインタビューに応じた。戦禍の中、陣頭指揮を執るクリチコ市長は、かつてWBC世界ヘビー級王者に輝くなど一時代を築いた元プロボクサーでもある。現在のキエフの様子や日々の職務、そしてロシアへの想いなどを明かした。
――侵攻開始から1ヶ月が経とうとしています。
第二次世界大戦以降ヨーロッパで起きた一番大きな戦争であり、数百万人のウクライナ人が西部や海外へと避難しています。大きな悲劇です。なぜこの戦争が起きたのかを皆が知る必要があります。
2014年にウクライナは民主主義を受け入れて、ヨーロッパの仲間入りを目指しました。しかし、ロシアとプーチンは我々の意志を受け入れることを拒否しました。彼はもう一度ソビエト連邦を作りたいと願っているからです。ロシア帝国を作ろうとしているのです。そして、ウクライナはその計画上とても大きなピースなのです。ですが、我々はその計画がどこで終わるのか分かりません。ドネツク・ルガンスクで終わるのでしょうか。もしかすると、ポーランドの一部やバルト三国、ドイツにまで支配を広げたいのかもしれません。
ロシアは嘘を広めています。プロパガンダを使って「ウクライナにはファシストがいる」と偽の情報を流しているのです。我々ウクライナ人は平和の民です。これまで一度でさえ他国を武力攻撃したことはありません。ロシアに圧力をかけたこともないのです。ウクライナはロシアにとって脅威だと言いますがそんなことは全くあり得ないことです。
私は東ヨーロッパ最大の都市のひとつキエフの市長ですが、半分ロシア人です。母親がロシア人だからです。どうしてロシアのことを憎めるでしょうか。そしてなぜ、ユダヤ人のバックグラウンドを持つゼレンスキー大統領がファシストになれるのでしょうか。これらは嘘ですよね?
この戦争はロシアの野望によって引き起こされたのです。そして、その矛先は軍隊に対してだけではありません。一般人に対しても向いているのです。これはジェノサイドです。ハリコフ、マリウポリ、ブチャなど小さな街が壊滅的に破壊されています。どれ程の一般人が殺されたか分かりません。今も数えられないほどの犠牲者が出ていると考えられます。この戦争は、ウクライナの人々の人生を完全に変えてしまいました。
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source : 週刊文春 電子版オリジナル