週刊文春 電子版

苦境の習近平 台湾侵攻「これだけの理由」

野嶋 剛
ニュース 政治 国際

 プーチン大統領同様、世界から厳しい目を向けられている人物がいる。かねてより台湾統一の意欲を示していた習近平国家主席だ。台湾では「今日のウクライナは、明日の台湾」との言葉も広まる。侵攻が現実味を帯びてきた。

「いまの中国は黄俄孝子だ」

 そんな言葉が中国のSNS・ウェイボーやウィーチャットで囁かれては、公安傘下で監視を行う“ネット警察”や自主規制をかけている運営側に消されている。

 黄俄は中国語で、黄色いロシア人。孝子は孝行息子。つまり黄俄孝子は「ロシア人に媚びへつらう中国人」を意味するのだ。

習近平国家主席

 ウクライナへの攻撃直前にロシア・プーチン大統領と北京五輪で手を取り合い、ロシアの侵略を否定しない習近平政権に対する、中国人民の痛烈な皮肉だ。

北京五輪直前に会談した二人

 もう一つ、ネット上から消されたものがある。

 上海交通大学特任教授の胡偉氏による『ロシア・ウクライナ戦争のあり得る結果と中国の選択』というタイトルの論考だ。

「指導部に向けて書いた」と胡氏は明記し、3月13日にネットに上げた。習近平のロシア支持は戦略的ミスであり、「プーチンの呪縛に捕えられてはならない。なるべく早期に袂を分かつ必要がある」と断じた。すぐに読めなくなったが、内容は中国内外に拡散した。

 胡氏は知名度の高い国際派学者で、政府系シンクタンクの一員でもある“体制内”の人物。その人物が堂々と声をあげたのだから、水面下では想像以上に不満が溜まっているはずだ。

 習近平には米バイデン政権が仕掛けた対中包囲網を、ロシアとの共闘で突破したいという思惑があった。だがウクライナとの戦争の長期化と民間人被害の拡大でロシア批判が高まり、計算外の事態が生まれた。胡氏の論文も、安易な親露反米路線を戒めるものだった。

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source : 週刊文春 2022年3月31日号

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