オスカー像を手にし、「君がオスカーか!」と喜びを露わにした濱口竜介監督。3月28日(日本時間)、米アカデミー賞で4部門にノミネートされていた映画『ドライブ・マイ・カー』が、国際長編映画賞を受賞した。日本映画の同賞受賞は2009年以来。作品賞と脚色賞のノミネートは、日本映画史上初めてのことだった。
2021年には、世界3大映画祭全てで賞に輝く快挙も果たした。偉業の理由について、今作でプロデューサーを務める山本晃久氏はこう語る。
「濱口監督と出会った当初は、よく『SLAM DUNK』の話で盛り上がりました。『ジョジョの奇妙な冒険』も大好きだそうです。映画の入口となったのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だったようですし、エンターテインメントの面白さをしっかりと体の中に取り入れてきたのだと思います。その上、東京大学在学中に入っていた映画研究会では、所謂“シネフィルマウント”を先輩たちから受け、映画史も随分勉強したと聞いています。ですから、濱口さんの修了制作を見た時には驚きました。しっかりと学術的なバックグラウンドを持ちながら、一方で軽やかさも感じる。商業映画とインディー映画で二分されてしまっている日本映画界では、非常に稀有な存在です」
多言語演劇を支える外国人俳優との通訳に、現役の役者をアサインしたり、監督自ら家福(西島秀俊)とみさき(三浦透子)の道のりを辿って、東京から北海道まで1200キロ以上を車でロケハンしたりと、濱口監督が同作に懸けたこだわりは枚挙に暇がない。
「高槻(岡田将生)を逮捕する刑事役のキャスティングにも、濱口さんは非常にこだわられました。ワンシーンだけの登場で決して出番が多い訳ではないのですが、様々な提案をしても、なかなか首を縦に振らなかった。高槻という人間を作品から退場させる説得力を持った人でないといけないと考えたのだと思います。そこで、吉田大八監督に白羽の矢が立ちました。物語を生み出す人の持つ力に目をつけたのではないでしょうか。どんな役柄でも大切にする、濱口監督の姿勢が表れていた気がします」(監督補の渡辺直樹氏)
ただ、このような快挙を達成しながら、本作の制作費はわずか1億5000万円ほど。今回作品賞にノミネートされた作品の中では、群を抜いて少ない予算だ。
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source : 週刊文春 2022年3月31日号