猫ビルに収められた10万冊。蔵書が物語る、知の遍歴——。(写真・文 薈田純一)
立花隆さんの書棚を撮る機会にめぐまれたのは2010年の秋だった。知の巨人の書棚はどんなものかと立花さんの根城である猫ビルの下見に伺うと、10万冊を超えるともいわれる蔵書に正直驚いた。そして撮影には一部ではなく、「全部(の書棚)を撮る」という条件がついていた。
私の撮り方は少し変わっている。1カットで全体を撮るのではなく、書棚の棚を1つずつ撮影しそれを組み上げるという方法だ。手間のかかる方法だが、こうすると全ての棚の本の背表紙が見えて、書棚の「たたずまい」が強調されるのだ。
猫ビルに通うこと1年半。書棚は7222枚の写真に分割された。それを組み上げるまでにもう1年。『立花隆の書棚』という本が出来上がるまでには3年かかった。
昨年立花さんが亡くなり、あらためて書棚の写真を見た。そこには膨大な数の本の背表紙が、地層のように立花さんの知的歴史の断面を表出させている。背表紙をながめていると、いろんな立花さんを思い出した。書棚は時にその人の形代のようになる。ならば多くの人とともに立花さんの何かを発見する、そんな機会をもうけたいと思った。それがこのエレジーとしての写真展である。
「追悼 立花隆の書棚展」4月11日~15日午前10時~午後6時まで(初日は13時開場。最終日は16時閉場)
文春ギャラリー紀尾井町(千代田区紀尾井町3-23文藝春秋西館1F)
主催:「追悼 立花隆の書棚展」実行委員会(講談社・中央公論新社・文藝春秋)
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source : 週刊文春