〈フィクサー 陰で仲介・調停することで報酬を受ける黒幕的人物〉(広辞苑より)。時の首相や幹事長らを操る一方、曰くつきの企業の顧問として蠢く男――そんな“令和のフィクサー”を120分にわたって直撃した。

「ずっと礼儀をちゃんとしているから、二階(俊博)先生も可愛がってくれた。それだけのことです。じゃなきゃ、何でこんなに仲良くなれるの。僕は敵も増えて来ていますけど、可愛がってくれる人たちが沢山いたことは事実です。野田(佳彦)さんも麻生(太郎)さんも総理になりました。菅(義偉)さんもなった。食事させてもらった人がみんな偉くなっていく。周りが言っていたのは、僕は『人間交差点だ』と」

 4月18日、グレーのパーカー姿で加熱式タバコの煙を吐き出しながら、取材に応じたのは、コンサルティング企業「大樹総研」の矢島義也会長(61)だ。

 
政界、官界に太いパイプを持つ矢島氏(「大樹通信」より)

 今年に入り、“フィクサー”の動向が注目を集めた事件がある。2月25日午前、繁華街の喧噪から少し離れた矢島氏の豪邸に姿を見せたのは、東京地検特捜部の係官。数時間後、銀座の大樹総研にも家宅捜索が入り、70箱を超える段ボールが運び出された。

 司法記者が解説する。

「ガサは、警視庁が金融商品取引法違反(偽計)容疑で捜査に乗り出した医療ベンチャー『テラ』の関係先として行われたもの。大樹は、テラと業務提携していた医療機器会社『セネジェニックス・ジャパン』の顧問だった時期があり、特捜部の経済班が矢島氏ら複数の大樹関係者から聴取を行ったのです。警視庁でなく、特捜部が大樹側のガサに乗り出したことで、政治家との関係などが背景にあるのでは、と囁かれました」

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source : 週刊文春 2022年5月5日・12日号