26人の命を乗せた観光船は、悪天候の中、なぜ運航を強行したのか。大惨事の背景には、知床の観光ビジネスに狂奔する一方、海を甘く見て安全を軽視した運営会社の姿があった。“人災”を招いた“強欲一族”の罪を暴く。
▶昨年船長を解雇「引き継ぎもせず」素人が後任に
▶87歳オーナー町議20年で“利益誘導”、土地買い占め
▶息子の社長は船の設備の投資に「本当に必要なの?」
▶54歳船長借金で単身赴任、残業代で大モメ警察出動
▶もう一つ事故を隠していた 船長「乗り切ったわ」
北海道東部、オホーツク海の“最果ての地”知床半島。今年1月14日、世界自然遺産・知床国立公園への玄関口である斜里町のリゾートホテル「北こぶし知床 ホテル&リゾート」の壇上に上がった白装束の古老は、流氷の到来と観光の安全を祈願した。
約50人の観光事業者を前に、厳かな所作で「オホーツク流氷祈願祭」を執り行ったのは、同町の一大ホテルチェーン「しれとこ村グループ」のオーナー・桂田(かつらだ)鉄三氏(87)である。
だが、同グループが運営する「知床遊覧船」で惨事が起きたのは、その約3カ月後のことだった。
4月23日午後1時過ぎ、ウトロ港を出航した遊覧船から「エンジンが使えない」「浸水して沈みかかっている」という通報が入り、それから2時間後、通信が途絶えた。4月26日現在、11人の乗員乗客が遺体となって発見され、15人が行方不明。連日懸命な捜索活動が続けられている。
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source : 週刊文春 2022年5月5日・12日号