日本ワインに可能性を感じ、遠い異国から日本に辿り着いたシーボルトたち。日本人と手を携え奮闘する、三者三様の物語を追う。
撮影 橋本 篤
北海道・岩見沢|10R ワイナリー
発展目覚ましい日本ワイン。そのシーンを活性化させているのが、日本の地でワインを造る、外国人栽培醸造家だ。その筆頭が、北海道・岩見沢に拠点を置くアメリカ人醸造家のブルース・ガットラヴさん。2009年、妻の亮子さんと国内初の受託醸造所である『10R(トアール)ワイナリー』を立ち上げた。醸造設備を持たない生産者に醸造の場を提供し、知識もシェアする、いわば“ワインの学校”だ。カリフォルニアでワインコンサルタントをしていたブルースさんは、80年代に縁あって栃木県『ココ・ファーム・ワイナリー』の栽培醸造長として日本に移住。その後独立に際し、欧州も視野に適地を求め、選んだのが岩見沢だった。
「規制の多い欧州に比べて、日本なら、法律に縛られず自由にワイン造りができる。冷涼な気候にも可能性を感じた。適した品種を農薬に頼らず育て、ぶどうを完熟させれば、あとは自然に任せて醸造するだけでいい」
ブルースさん自身は使わない言葉だが、近年は同様の方法論に即す生産者の多くが「自然派」と呼ばれ、世界中で潮流を作っている。『10R』から巣立った数々の醸造家もその流れに合流。今や日本を代表する産地と評される北海道の、ワインの品質向上に貢献している。
ブルースさん自身が栽培するぶどうから造るワインは『上幌ワイン』としてリリースされる。白ワインの「MORI」と赤ワインの「KAZE」の2種。「KAZE」はピノ・ノワール主体で、だしのような旨味と心地よい酸味が特徴的
新潟・佐渡|ジャン=マルク・ブリニョ
もう一人、「自然派」の醸造家として、カリスマ的人気を誇る人物が日本にいる。10年前、故国フランスから新潟県佐渡島に拠点を移したジャン=マルク・ブリニョさんだ。
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source : 週刊文春 2022年6月23日号