「分かってはいたものの、いざ表沙汰になると、すごい衝撃だ」

 政治部記者がそう表現するのは、6月16日に勧告された衆議院議員選挙区画定審議会による新しい区割りだ。一票の格差是正のため、289選挙区のうち、半数の140で線引きが変わる超大規模な見直しだが、とりわけ永田町のセンセイを泣かせ、笑わせ、困惑させているのが「十増十減」である。

 最注目は4から3に減員される山口県だ。安倍晋三元首相や林芳正外相、岸信夫防衛相ら実力者がひしめき、イス取りゲームに敗れるのは一区の高村正大(こうむらまさひろ)氏と言われるが、ことはそう簡単ではない。キーマンは高村氏の父、正彦元副総裁。安倍氏の悲願だった集団的自衛権行使容認の法制化の立役者であり、引退後も憲法改正実現本部の最高顧問の個室を持ち、どの幹部より長く党本部にいる。公明党の憲法改正を一手に担う北側一雄副代表と関係が深く、「水面下で調整できるのは正彦氏だけ」(自民党関係者)。憲法改正をレガシーにしたい岸田文雄首相が正大氏をむげにすれば、父親がへそを曲げかねない。

 6から5に減る宮城県。

「小野寺さんと安住さんは一安心でしょう」(地元記者)

 首相側近の小野寺五典元防衛相と立憲民主党の安住淳前国会対策委員長は、隣接する六区と五区で、「互いに強い候補をぶつけないよう双方が気を使っている」(地元市議)と囁かれてきた。党を超えた相互扶助関係が減員で崩れかねなかったが、それぞれの大票田の気仙沼市、石巻市を中心に再編された。割を食うのは四区の伊藤信太郎氏だ。

「ハーバード大を出たインテリで他人に興味がない。『伊藤氏を応援しなくて良くなる』と喜ぶ自民の地方議員もいる」(同前)

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source : 週刊文春 2022年6月30日号