統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に子どもや妻を取られた家族は、奪還を試みる。阻もうとする統一教会は、さまざまな策を弄する。山上徹也容疑者の母が教団に“奪還”されたように、信者の“洗脳”を解くのは簡単ではない。家族との絆を取り戻すための決め手は何か。元週刊文春記者で、統一教会の問題を長年取材してきた石井謙一郎氏が解き明かす。

 統一教会のマインドコントロールは、人の性格も外見も変える。就職したばかりの会社を辞めて献身(統一教会の仕事をすること)した20歳の女性は、家を出て信者同士の共同生活に入り、霊感商法に従事した。

 母は、たまに帰宅する娘の見た目の変わりように驚いた。おしゃれが好きだったのに古びた洋服で、髪型にも無頓着になったからだ。眼差しも、吊り上がるようにきつくなった。いつもお腹を空かせ、食パンの袋を開けるなり丸ごと1斤食べてしまうこともあった。

 両親は脱会するように説得を試み、娘は「脱会する」と偽って逃げる。そんなことが5回も繰り返された。両親は脱会カウンセリングの専門家の助力を仰ぐと決め、娘と真剣に向き合うために父は会社を早期退職した。娘が脱会した後の手記で、父は振り返っている。

〈心の問題であることに深く思いを致さず、単に統一教会から本人を離せばよいという形ばかりにこだわっていたのだ。本人の気持ちを心から理解しようとする努力、家族中で本心から話し合える家庭を作り上げる努力、そんなところが欠けていたように思う〉

 統一教会の信者は、山上容疑者の母と同じく、「壮婦」と呼ばれる中高年の女性が中心だ。

「統一教会は『幸せな家庭づくり』を表向きのモットーに掲げ、どこの家庭にもある小さな問題をほじくり出して大袈裟に言い募り、解決するには信仰が必要だと偽ります。だから主婦が騙されやすい。夫が仕事ばかりで子育てに協力しないとか、姑との折り合いが悪いとか、入口は何でもいいんです」(元壮婦信者の夫)

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source : 週刊文春 2022年9月22日号