大学院在学中に非常勤講師を務めた高校は、かなりヤンチャな学校だった。そのため最初は周りからも心配されたが、授業については何の支障もなかった。というのも、講師たちは一様に話術に巧みで、知識も豊富だったので、歴史に興味のない生徒たちをひきつける力を、みんなそれなりに持っていたのだ。
日本近世史の進藤さんなどは、授業中に江戸時代の「切腹」の話題に生徒たちが興味をもったのに気を良くして、その詳細な段取りを力説し、それがあまりに真に迫っていたため、気づいたら生徒のなかに嘔吐者がでていたという伝説すらあった。
そんななか、やがて“奇跡”が起った。近隣でも「あまりお行儀のよくない学校」として知られていた、この学校が、僕らが働いているわずか数年の間にメキメキと偏差値と合格実績を上げていき、あっと言う間に「進学校」に生まれ変わってしまったのだ。中学受験の一般化に先んじて中等部を作り、中高一貫校化したことなどが勝因だったみたいだ。
初回登録は初月300円で
この続きが読めます。
有料会員になると、
全ての記事が読み放題
既に有料会員の方はログインして続きを読む
※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
source : 週刊文春 2022年9月29日号