「お願い! 静かにするから中に入れて!」

 

 年明け間もなく、東京都あきる野市の住宅街の一角に、玄関前で泣きじゃくる5歳男児の声が響いた。

 昨秋までこの家に住んでいたのは、幸せを絵に描いたような一家3人だった。

「10年ほど前に夫婦で引っ越してきて『若いですが宜しくお願いします』って挨拶されてね。奥さんは獣医師で、旦那さんは電気関係の仕事をしていたはず。5年前に赤ちゃんが産まれて、庭先でバーベキューをしたり、近所の公園に3人でお出かけしたり楽しそうに見えましたよ」(近隣住民)

 ところが昨年10月頃から夫の姿が消え、年末から茶髪の男が出入りするように。

「新しく来た男の人は、冬なのにTシャツに短パン姿でタバコを吸って、目が合っても会釈もしない。仕事もしていないようでした。その上、お喋りだった息子さんの声が全然聞こえて来なくなって……」(同前)

 時折聞こえてくるのは、冒頭のような悲痛な叫び。

事件現場となったあきる野市の家

 悲劇が起きたのは2月22日。男児の母親(35)が「子供が倒れて意識がない」と119番通報。その夜、男児への傷害容疑で山本伯画容疑者(40)が逮捕された。

「山本は『注意したのに反省しないから』といった理由で男児の右太ももを複数回蹴りつけたと供述している。その際、男児は転倒して頭を強く打ち、意識不明で脳死状態となっています」(社会部記者)

 昨夏、オンラインゲームを通じて男児の母親と知り合い上京した山本。実家は、温泉郷として知られる長野県の山ノ内町だ。

「山本の父親は民宿を営んでおり、母親は保育士の資格を持っていて、よく東京に働きに出ていた。彼は一人っ子です。両親に甘やかされて育ってきたような感じでした」(地元住民)

 小学校で野球とスキーを始め、中学ではアルペンスキーの選手として全国大会に出場。高校はスキーの推薦で長野日大に入学。だが、同級生の記憶に残っているのはスキーの腕前ではない。

小学校時代の山本

「彼を家に呼んで遊ぶと、プラモデルのパーツとかファミコンのソフトがなくなってしまう。あいつはそういう盗みを繰り返す奴でした」(中学の同級生)

小学校の卒業文集

 高校卒業後は都内の柔道整復師の専門学校に通い、その後は定職に就かず、フリーターとして過ごしていた。そんな山本に救いの手を差し伸べたのが父親だ。地元企業関係者が言う。

「お父さんがコネを使って山本をスキー場の運営会社に就職させたんです。そこで夏場はリフトの整備、冬場はスキー場のパトロールなんかをしていました」

高校時代の山本

 給料は額面で25万円ほど。山本は家が近いのに会社の寮で暮らしていた。

「彼は食堂で食券を買わずにツケで食べていた。だから食堂のおばちゃんからいつも『早く金払え』と言われていました」(同前)

 だが、この会社も30歳の頃に退職。この前後に結婚し、子どもにも恵まれたが……。別の関係者が言う。

「表向き“自己都合”で退職したが、実は違います。当時、バイトでスキー場に来ている子たちのお金が盗まれるという騒動があり、彼が疑われていたんです」

 さらに極め付けの事件を約5年前に起こしている。

「山本は消防団に所属し、長らく経理を担当していました」(前出・地元住民)

 地元の慣習で消防団は35歳位で抜けることになっており、引き継ぎが行われたのだが……。

「その際に、消防団でプールしていた100万円近いお金が消えていることが分かったのです」(同前)

 警察に被害届を提出することも検討された。だが、

「結局は山本の父親が弁償し、内々で収めることになりました」(同前)

 山本は妻とも離婚。以降、職を転々としながら人目を避けるようにして暮らしていたという。実家のポストには請求書の山。母親が「あんた、何こんなに使ってんの!」と怒鳴る声が周囲に響いた。

 昨年末、家族に「仕事で横浜に行く」と嘘をつき、オンラインゲームで知り合った女性の家で同居を始めた山本。男児を蹴った理由についてこう供述している。

「(男児が)母親の財布からお金を盗んだので、しつけのために蹴った」

 金を盗んだのは本当に男児だったのか。幼少より嘘を重ね、金に執着してきた男の罪は、あまりに重い。

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source : 週刊文春 2023年3月9日号