「海上自衛隊に納入した潜水艦用のソーナー(水中音波探知機)の不具合を修理したのですが、あのような基本的な欠陥は、12年間の技術者経験で初めて見ました……」
小誌の取材にそう語るのは、通信機器メーカー「沖電気工業(通称・ОKI)」の沼津工場(静岡県)で修理担当者だったA氏だ。
1881年創業の老舗企業・沖電気工業。東証プライム市場に上場し、昨年3月期の売上高(連結)は約3521億円、経常利益(同)は約77億円に及ぶ。防衛関連事業にも力を入れており、2021年度の調達実績(防衛装備庁発表)によれば、第9位の日立製作所に続く第10位の約277億円。中でも数多く受注してきたのが、潜水艦用のソーナーだ。
ソーナーは、自ら音波を発信して敵艦の位置を探知する「アクティブ・ソーナー」と、敵艦が水中に発する音波を探知する「パッシブ・ソーナー」に大別されるが、沖電気が得意とするのは後者のパッシブ・ソーナー。同社は戦前から、潜水艦のセンサーを開発・製造してきただけであって、その技術は国内随一とされる。
「近年、軍事力強化を図る中国の潜水艦が日本の領海を侵犯するケースが増えている。それだけに、敵艦の動きをいち早く探知するソーナーの重要性はますます高まっています」(元自衛艦隊司令官・香田洋二氏)
そんな中、沖電気が2017年3月16日に12億4848万円で落札したのが、防衛装備庁が発注した「曳航型アレイ」の試作品開発。これまでの豊富な実績もあり、随意契約だった。曳航型アレイとは、潜水艦が自艦から離して曳航する(引っ張る)タイプのソーナーで、船体のノイズの影響を軽減できるため、探知能力が非常に優れている。沖電気は沼津工場で試作品を完成させ、2019年度中に海上自衛隊に納入したという。
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source : 週刊文春 電子版オリジナル