世の中は連休だ、リベンジ消費だと浮かれているが、老人ホームに浮かれた様子は微塵もない。ふだんと変わりない落ち着いた時間が淡々と流れている。歳を取ると落ち着きが出てくるのだ。以下は連休中の3日間の日記である。
【1日目】休みと言えば旅行だ。観光地はどうか。コロナ前、京都に行くと、街中が外国からの観光客であふれ、まるで台北かバンコクに来たようだった(台北にもバンコクにも行ったことがないが)。少しずつしか歩けない。ミロのヴィーナスが初めて日本に来たときも、モナリザが来たときも見に行ったが、「立ち止まらないでください」とせかされながら作品の前を通過するだけで、感動する暇もなかった。どうせじっくり見ても何の感動も得られなかっただろう。それが唯一の慰めだった。
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source : 週刊文春 2023年5月18日号