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「今でもパワハラの認識はない」連合山梨ナンバー2  女性職員への違法パワハラ判決が確定していた

スクープ速報

「週刊文春」編集部
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 連合山梨の事実上のナンバー2にあたる田中好久事務局長に対し、自治労山梨県本部の元女性職員がパワーハラスメント行為を受け、うつ病を患ったなどとして損害賠償を請求していた民事訴訟を巡り、田中氏のパワハラなどを一部認定した東京高等裁判所の判決が確定したことが、「週刊文春」の取材でわかった。

 連合山梨は県内最大の労働組合の連合体で、HPでも〈全ての働く人の雇用と暮らしを守る〉などと掲げてきた。その連合山梨で専従では、会長に次ぐナンバー2にあたるのが、事務局長の田中氏だ。

「田中氏は、自治労山梨県本部の中央執行委員長などを経て、2021年10月、連合山梨の事務局長に就任しました。地元議員らとも交流が深く、重鎮的な存在です」(労組関係者)

連合トップの芳野友子会長 ©文藝春秋

「お前、何考えているんだ!」一方的にA子さんを叱責

 その田中氏や田中氏の部下のB氏からパワハラを受けたなどとして訴えていたのが、自治労山梨県本部の元女性職員A子さん。彼女の主張によれば、田中氏が同本部の中央執行委員長時代の2019年6月頃から、度重なるパワハラを受け、2019年12月に退職を余儀なくされたという。2020年7月、慰謝料110万円の支払いを求めて田中氏を提訴。甲府地方裁判所は2022年9月、A子さんに対し、22万円の賠償を命じる判決を下した。

 パワハラと認定されたのは、例えば、以下の行為だ。田中氏は2019年8月、事務所の車のタイヤ交換が自らの知らないところで行われていたことを巡り、実際には田中氏の部下のB氏が交換を命じていたにもかかわらず、A子さんの判断で交換したと見なし、彼女を「お前、何考えているんだ!」と激しく叱責したという。これについて、甲府地裁は次のように認定した。

〈タイヤの交換はB(判決は実名)の意向に沿うものであったと認められるにもかかわらず、原告がBに頼まれて交換した旨言ったのに対し、Bがこれを否定するや、双方の言い分の詳細を確認することなく、一方的に原告を叱責し、態様も比較的長時間にわたるものであったことなどを踏まえると、社会通念上相当と認められる限度を超えたものというべきであるから、原告に対する違法なパワーハラスメントに当たると認められる〉

22万円の賠償を命じる地裁判決が確定

 さらに、甲府地裁はB氏によるパワハラにも言及したうえで、〈被告は、Bの原告に対する違法なパワーハラスメントを直接見て、原告から、直接(略)パワーハラスメントや嫌がらせが辛い旨聞いて〉いたとし、〈パワーハラスメントを防止するため適切な措置を講じる義務を負っていたというべきであるにもかかわらず、何らの措置もとらずこれに違反したと認められる〉として、パワハラ防止措置義務違反にあたる旨を指摘した。

 つまり、甲府地裁は、田中氏のA子さんに対する限度を超えた叱責といった違法なパワハラ、そして、部下のパワハラを放置したことによるパワハラ防止措置義務違反について認定したのだ。

判決文では〈パワーハラスメントに当たる〉

 A子さん、田中氏ともに判決を不服として控訴したが、東京高裁は今年2月、双方の控訴を棄却。田中氏のパワハラやパワハラ防止措置義務違反などを一部認定し、22万円の賠償を命じる地裁判決を支持した。その後、両者は上告せず、判決が確定している。

 A子さんは事実関係を認め、次のように語った。

「23年間務めた職場でしたが、田中氏や彼の部下B氏からのパワハラで、私は退職を余儀なくされました。今も不眠や震えが続き、心療内科に通っています。裁判が終わった後の連合山梨や自治労山梨県本部の消極的な対応には失望を感じました。新たなパワハラ被害を出さないためにも、働く人のための労働組合として明確な対応を示すべきです」

「私はやはり今でもパワハラという認識はないんですね」

 田中氏に話を聞いた。

――高裁判決について。

「パワハラという所では、司法の結果として一部パワハラが認められたということはありますけれども、私はやはり今でもパワハラという認識はないんですね」

――イジメに近い面も。

「それはまた違うんだな~。やっぱり」

――責任者として、パワハラ防止措置を講じなかった。

「何もかも見て見ぬふりをしてきたわけではない」

パワハラが認定されたことを「重く受け止め」

 連合本部に見解を求めると、以下のように回答した。

「あらゆるハラスメントの根絶は労働運動が取り組むべき課題の一つである中、今回の事案が認定されたことについては重く受け止めております。

『連合行動指針』の中において、私たちは連合運動に携わる者として、人権の尊重や差別を行わない・許さない旨を掲げております。連合運動は組合員や社会からの信頼があって進むものであり、とりわけリーダーは常に自らを律していかなければならず、コンプライアンス遵守のみならず行動規範を互いに再確認し、襟を正していかなければならないと考えております。

 本件は、田中氏が自治労山梨県本部在任中に発生した事案であり、その後に連合山梨の役員推せんの正規の手続きを経て選出されていますので、当該構成組織と連合山梨とが連携して解決すべき問題と認識しております。しかしながら、地方連合会の組織運営上の課題について、連合総体の問題として連合本部も共有し、ともに考えていく必要があるとの認識から、連合山梨に対しては、自らの規約・規程にもとづき適切に対応するよう、既に伝えているところです。

 なお、地方連合会は連合本部の下部団体の位置づけではなく、それぞれ独自の規約にもとづき運営されています。そのため人事についても、組織機構上、連合本部は直接関与することができないことについてはご理解願います」

連合山梨のHP

 労働者の権利向上を掲げ、雇用環境の改善などを訴えてきた連合。その幹部によるパワハラが司法の場で認定されたことを受け、どのような対応を取るのか、注目される。

 5月17日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および5月18日(木)発売の「週刊文春」では、A子さんの証言や、甲府労働基準監督署が認定した田中氏のセクハラ行為、田中氏との60分にわたる一問一答などについても報じている。

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source : 週刊文春 2023年5月25日号

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