東海研修会、関西奨励会。藤井少年は先輩棋士との実戦で強くなった。
愛知県出身の藤井聡太七冠は、小学4年のときから大阪の関西奨励会で腕を磨いた。名伯楽森信雄七段門下の糸谷哲郎八段が、藤井七冠を育てた関西棋界の風土を語る。
日本将棋連盟は東京と大阪にそれぞれ本部があり、棋士はいずれかに所属します。棋士は、基本的に1人で勉強をしますが、「研究会」といって、棋士同士が自主的に集まり学び合う場があります。ここで棋士同士の繋がりができます。とりわけ、関西では、同じ釜の飯を食った仲間として、繋がりは強いと思います。
東京では各々グループで場所を確保して集まるようですが、大阪では関西将棋会館の「棋士室」にみんなが立ち寄り、研究をしています。元々は物置だった部屋で、窓もなく狭いのですが、棋士同士の距離は近く、自然に話すようになる。プロの養成機関である関西奨励会で修行していた頃の先輩では、阪口悟六段と山崎隆之八段が印象深いです。約束などせずにふらっと行けば、この部屋の主である山崎さんはじめ誰かがいて、すぐに練習将棋が指せました。研究会をしている人や公式戦の検討をしている人、詰将棋に取り組んでいる人……みんなが将棋に向き合っていた。早指し将棋をやると、山崎さんが無双状態で、若手みんなが斬り倒されていく(笑)。全員が「打倒山崎」を胸に切磋琢磨して育っていきましたね。奨励会員の後輩との交流も多かったです。
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source : 週刊文春 2023年8月17日・24日号