二合升大の桐箱の中には将棋の駒が納められていた。上蓋の墨書に目が留まる。
《贈呈 野島崇宏殿
平成十六年九月十三日
日本将棋連盟》
第35回奨励会三段リーグ戦最終日。
今日、人生が終わった。
――自分は将棋界に必要な人間です、必ず役に立つ人間になります、そう祈り指し続けたが“君に用はない”と将棋の神様の声がどこかで聞こえた気がした。だから野島崇宏は26歳で将棋から一切の縁を切ろうと決めた。
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source : 週刊文春 2023年8月17日・24日号