「実名にすれば証言を重んじてくれるのでしょうか」
2020年、小池百合子東京都知事の半生を描いた『女帝 小池百合子』を著したノンフィクション作家の石井妙子氏は、取材相手のこの一言で決意した。
“芦屋の令嬢”として生を享けた少女が、やがてマスコミの寵児となり、初の女性総理候補とまで呼ばれるようになる――小池氏のきらびやかな半生を描き切った『女帝』は21万部を超えるベストセラー。11月8日、その文庫版が発売されたが、そこでは決定的な改稿がなされたのだ。
同書の白眉は、小池氏が選挙の度に指摘されてきた華麗な学歴の決定的な嘘を暴いたところにある。
〈彼女は実際にはカイロ大学を卒業していません〉
こう記された石井氏宛ての1通の手紙から同書のハイライトは生まれた。便箋の末尾には〈北原百代〉の署名がある。彼女こそ、石井氏が探し求めていたエジプト留学時の小池氏の全てを知る同居人だった。
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source : 週刊文春 2023年11月16日号