「社長就任以来進めてきた改革に、巨大組織がようやく変わり始めた手応えがある。これを後戻りさせることはあってはならないんです。だから、自分のやってきたことを形にして伝えておきたい。文春での連載をやってみようと思います」
小誌の編集者を前に、三井住友フィナンシャルグループの太田純社長はそう意欲を示していた――。
11月25日、すい臓がんで急逝した太田氏。まだ65歳だった。
「2019年に社長に就任した太田さんは、剛腕の『改革バンカー』として知られていました。伝統的な銀行業務から脱却しないと、淘汰されるという強い危機感を抱いていた。19年度の採用サイトには〈かつては、銀行と呼ばれていた。〉というフレーズを掲げたほどです。銀行の『情報産業化』などを打ち出し、社内ベンチャーの奨励や本店でのドレスコードの撤廃にも取り組んできました」(三井住友幹部)
三井住友FGの奥正之元会長も小誌の取材に「彼はアイデアマンだった」と振り返る。その型破りな発想はどこから生まれたのか。
〈若い人にもやりたいことを〉
太田氏は京都市出身。私立洛星中高を卒業後、京都大学法学部に進学した。高校まではバスケットボール部、大学ではアメリカンフットボール部に所属。当時は身長180センチ、体重100キロだったという。
1982年に「間口が広く、やりたいことが見つかりそうだ」との理由で、旧住友銀行に就職。最初に配属された大阪駅前支店の同僚と結婚している。中国での海外研修を経て、国際投融資部に配属された。
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source : 週刊文春 2023年12月14日号